「個人投資家向け税制に関するアンケート」で見る金融所得課税の一体化

「個人投資家向け税制に関するアンケート」で見る金融所得課税の一体化

複雑多岐に渡る日本の税制は毎年改正がおこなわれていますが、その税制改正のたたき台としては毎年8月に金融庁が取りまとめる「税制改正要望」があります。

FXトレーダーを含む個人投資家はこの中の「金融所得課税の一本化」を求めて、アンケートなどの様々な活動をおこなっています。

この金融所得課税の一本化は、どのような影響があるのでしょうか。今回は金融所得課税の一本化で期待される影響について見てみましょう。

アンケート調査の概要とその回答

金融所得課税の一本化について見る前に、今回公表されたアンケートの内容とその結果について見てみましょう。

アンケート調査の概要

  • 調査期間:2016年8月1日(月)~8月31日(水)
  • 調査対象:下記の24の賛同企業より、個人投資家向けにアンケート調査を実施
  • 回答者数:33,067名
  • 調査方法:インターネットアンケート調査地域:全国

回答者の属性情報

■年齢(n=33,067)

  • 20歳未満…0.1%
  • 20代…4.1%
  • 30代…15.0%
  • 40代…24.4%
  • 50代…22.4%
  • 60代…23.3%
  • 70代…9.0%
  • 80代…1.6%

■性別(n=33,067)

  • 男性…86.3%
  • 女性…13.7%

■取引している金融商品(n=33,067)(複数回答)

  • 国内株式-現物取引…38.8%
  • 国内株式-信用取引…11.3%
  • 外国株式…5.5%
  • 投資信託…19.5%
  • 債券…7.1%
  • 先物・オプション取引…5.0%
  • FX…9.5%
  • 商品先物…0.9%
  • その他…2.4%

質問とその回答

■質問(1):「上場株式等(国内上場株式、外国上場株式、公募株式投資信託等)」と「デリバティブ取引等(先物・オプション取引、FX、商品先物等)」との損益通算が認められることについて、賛成しますか?(n=33,067)

  • 賛成…92.8%
  • 反対…7.2%

■質問(2):今後の取引意向等についてお伺いします。質問(1)のように上場株式等とデリバティブ取引等の損益通算が可能となった場合、ご自身の投資行動に変化はあると思いますか。該当するものをご選択ください。(n=33,067)(複数回答)

  • これまでより上場株式等の取引量を増やす…20.2%
  • これまでよりデリバティブの取引量を増やす…13.5%
  • これまで取引していなかった新たな投資商品に投資する…24.3%
  • ヘッジ取引などの取引手法としての活用を検討する…17.6%
  • 特に変わらない…49.6%
  • その他…1.3%

現在取引している金融商品別の投資意向

■国内株式-現物取引(n=29,384)(複数回答)

  • これまでより上場株式等の取引量を増やす…21.0%
  • これまでよりデリバティブの取引量を増やす…13.7%
  • これまで取引していなかった新たな投資商品に投資する…24.1%
  • ヘッジ取引などの取引手法としての活用を検討する…17.9%

■国内株式-信用取引(n=8,593)(複数回答)

  • これまでより上場株式等の取引量を増やす…25.3%
  • これまでよりデリバティブの取引量を増やす…24.5%
  • これまで取引していなかった新たな投資商品に投資する…29.8%
  • ヘッジ取引などの取引手法としての活用を検討する…31.0%

■先物・オプション取引(n=3,751)(複数回答)

  • これまでより上場株式等の取引量を増やす…33.4%
  • これまでよりデリバティブの取引量を増やす…46.5%
  • これまで取引していなかった新たな投資商品に投資する…28.3%
  • ヘッジ取引などの取引手法としての活用を検討する…41.7%

■FX(n=7,169)(複数回答)

  • これまでより上場株式等の取引量を増やす…28.4%
  • これまでよりデリバティブの取引量を増やす…32.1%
  • これまで取引していなかった新たな投資商品に投資する…30.6%
  • ヘッジ取引などの取引手法としての活用を検討する…29.7%
出典:~個人投資家向け税制に関するアンケート~ 「金融所得課税一体化の範囲拡大」で個人投資家の動向は?

金融所得課税の一体化で何が変わるのか?

さて、気になるのは金融所得課税の一体化によって、どのような点が変わることが期待されているのでしょうか。

現在の税制の下では、個人投資家が取引可能な金融商品の税制上の取り扱いは全て異なっているため、わかりにくく不公平な税制と言われていました。

金融所得課税の一体化が実現すれば複雑な税制が一本化されるため、わかりやすく公平な税制になることが期待できます。

一本化によって期待されているのは、

  • 金融商品のうち債券の譲渡益が非課税から課税になること
  • 債券と株の損益通算が可能になること

の2点ですが、この2点が実現したことで、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。

債券の税制一本化で外債、外貨建てMMFの売却が進む

現状の税制のもとでは、債券取引で生じた利益のうち、

  • 譲渡益…原則非課税
  • 利子…源泉分離課税
  • 償還益…総合課税

とされてきましたが、一本化により株式と同様に20%の申告分離課税となりました。

これにより、2016年までに含み益のある外国債券(外債)や外貨建てMMFの売却が進み、債券中心のポートフォリオから株式中心のポートフォリオへの変動が期待されていました。

資産のポートフォリオ化

債券に関わる税制が株式と一本化されたことで、これまでのように金融商品による税制の違いを考える必要がなくなりるため、「株式」「債券」をまとめて「金融資産」としてあつかうことや、損益通算の考えが浸透することが期待されます。

中でも取引によって発生した損益を合算して全体の利益を圧縮し、収める税金を小さくする損益通算の考えかたは、複数の資産を組み合わせて安定運用を目指す「ポートフォリオ」の普及に繋がることが期待されています。

今後期待されるデリバティブ税制の一本化

今回の税制一本化で対象となったのは債券と株式にとどまり、FXなどを含めた金融派生(デリバティブ)商品の税制はそのままとなりました。

デリバティブに限れば、2012年に店頭デリバティブと市場デリバティブの税制一本化がおこなわれ、FXでは店頭FXと取引所FX(くりっく365)の税制一本化が実現しました。

しかし株式や債券などの従来型の金融商品とデリバティブ商品の一本化は、現在でも検討課題の1つにとどまり、実現の目処は立っていません。

完全な一本化が実現すれば、一定数の投資家はより活発な取引をおこなうと回答しているため、早期の一本化が望まれるところです。

おわりに

毎年のように金融取引の税制一本化は要望として提出されますが、その足取りは遅々として進んでいません。

しかし今回のアンケート調査でも明らかなように、一本化が実現されれば一定数の投資家はより活発な取引をおこなうことが期待できるため、早期の実現に期待したいところです。

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