徹底解説!「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」とは?

徹底解説!「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」とは?

2016年9月の日本銀行・金融政策決定会合では、これまでに導入された「量的・質的金融緩和」と「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の取りまとめと、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入が決定されました。

今回は、これまでの金融政策と新たに導入される「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の内容と、為替への影響を見てみましょう。

2013年4月の「量的・質的金融緩和(異次元の金融緩和)」

2%の「物価安定の目標」達成を目指した「異次元緩和」

日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%を、2年程度の期間を念頭にできるだけ早期に実現する2%の「物価安定の目標」を掲げました。

この目標を達成するために導入されたのが、マネタリーベースと長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上に延長することなどを柱とした、「量的・質的金融緩和」です。

マネタリーベース・コントロールの採用(全員一致)

量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベースに変更し、金融市場調節方針を以下のとおりとする。

「マネタリーベースが、年間約60~70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」

長期国債買入れの拡大と年限長期化(全員一致)

イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。

また、長期国債の買入れ対象を40年債を含む全ゾーンの国債としたうえで、買入れの平均残存期間を、現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長する。

ETF、J-REITの買入れの拡大(全員一致)

資産価格のプレミアムに働きかける観点から、ETFおよびJ-REITの保有残高が、それぞれ年間約1兆円、年間約300億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。

「量的・質的金融緩和」の継続(賛成8反対1)

「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。

引用:「量的・質的金融緩和」の導入について

2016年1月の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」

3つの次元で緩和する「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」

2013年4月に導入された異次元の金融緩和はその期待感から当初は大きな効果を発揮したものの、2014年10月の追加緩和のあとも2%の「物価安定の目標」を達成することができませんでした。

そのため、2016年1月に開催された金融政策決定会合で、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で緩和手段を駆使することで金融緩和を進める「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定しました。

「金利」:マイナス金利の導入(賛成5反対4)

金融機関が保有する日本銀行当座預金に▲0.1%のマイナス金利を適用する。今後、必要な場合、さらに金利を引き下げる。

具体的には、日本銀行当座預金を3段階の階層構造に分割し、それぞれの階層に応じてプラス金利、ゼロ金利、マイナス金利を適用する(別紙)。

貸出支援基金、被災地金融機関支援オペおよび共通担保資金供給は、ゼロ金利で実施する。

「量」:金融市場調節方針(賛成8反対1)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。

「質」:資産買入れ方針(賛成8反対1)

資産の買入れについては、以下のとおりとする。

  1. 長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入れの平均残存期間は7年~12年程度とする。
  2. ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。
  3. CP等、社債等について、それぞれ約2.2兆円、約3.2兆円の残高を維持する。

引用:「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入

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異次元緩和を支える「マイナス金利政策」と為替への影響

今回の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の内容は

2つの要素からなる「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」

日本銀行は2016年9月に開催した金融政策決定会合で、「量的・質的金融緩和」を導入してからの経済・物価動向と、政策効果の総括的な検証を実施しました。その結果を踏まえて導入されたのが、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」です。

新たな金融緩和では、金融市場調節によって長短金利の操作する「イールドカーブ・コントロール」と、安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」の2つが柱となります。

短期・長期金利の操作を目指す「イールドカーブ・コントロール」

2013年4月に導入した「量的・質的金融緩和」は、経済と物価に一定程度の影響を与えたことを踏まえて、長短金利の操作により実質金利低下の効果を追求する「イールドカーブ・コントロール」を導入しました。

2016年1月に導入されたマイナス金利政策に加えて、指定する利回りで国債を買入れる「指値オペレーション」の導入と、固定金利の資金供給オペレーションの期間を10年に延長することで、10年物国債の金利が概ねゼロ%程度で推移するように金利の動きをコントロールすることを目指しています。

政策継続を約束する「オーバーシュート型コミットメント」

イールドカーブ・コントロールと合わせて導入されたのが、「消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する」ことを約束した「オーバーシュート型コミットメント」です。

オーバーシュート型コミットメントのポイントは、消費者物価上昇率の「見通し」ではなく、「実績値」に基づいたコミットメントであるという点です。金融政策が経済・物価に影響するまで時間があることを踏まえると、中央銀行が「実績値」をベースに強いコミットメントをすること自体が異例と言えます。

おわりに

初期の「量的・質的金融緩和」と比べると、今回導入された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は複雑さを増しただけではなく、目に見えるインパクトが乏しいことからその効果は未知数と言えます。

「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」がこれからの外国為替市場に対してどのように影響するのかは、これまでの金融政策と同じように注目したいポイントと言えそうです。

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