世界各地で緊張と波乱が続いた2017年と2018年の展望

世界各地で緊張と波乱が続いた2017年と2018年の展望

番狂わせとなった2016年アメリカ大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の勝利や相次ぐ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)によるミサイル発射実験、離合集散が続く日本政治など、2017年も大きな混乱こそなかったものの波乱が続く1年となりました。

今回は、さまざまな出来事があった2017年の政治・経済の振り返りと、2018年の動向を占ってみましょう。

番狂わせとなった2016年アメリカ大統領選挙

トランプ・ショックからトランプ・ラリーへ

2016年アメリカ大統領選挙では、事前の予測をくつがえして大健闘した共和党のドナルド・トランプ候補が民主党のヒラリー・クリントン候補を破って当選しました。

排他的な政策や過激な言動で注目を集めていたことから、トランプ大統領の誕生による「トランプ・ショック」が心配されていましたが、実際には当選直後から通貨高と株高、長期金利上昇の三拍子そろった「トランプ・ラリー」がはじまりました。

通貨高は比較的早期に収束しましたが、株高・長期金利の上昇は1年近くたった2017年末でも継続中で、特に株式は連日のように史上最高値を更新し、ニューヨークダウは2万5千ドルをにらむ水準で推移しています。

連邦準備制度理事会(FRB)は利上げと資産縮小を進める

連邦公開市場委員会(FOMC)は、ほぼ市場予測の通りに3月と6月、12月の3回に分けてのフェデラルファンドレート(FFレート)引き上げを実施しました。

また、9月のFOMCでは量的緩和(QE)で膨らんだ連邦準備制度理事会(FRB)の保有する資産を段階的に減らしていくことが決まり、アメリカは日本やユーロ圏に先駆けて金融正常化を進めています。

相次ぐ北朝鮮のミサイル実験。日本の対応は?

金正恩体制で続くミサイル実験や漁船漂着

2017年のトピックスとして忘れてはならないのが、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による地政学的リスクの高まりです。

相次いだミサイル発射実験とその成功や、既に保有しているとみられる核弾頭の小型化に成功したという報道、さらに秋から冬にかけて注目されるようになった漁船の相次ぐ漂着など、北朝鮮の動向はアジア・太平洋の新たなリスクとして急速に注目されるようになりました。

アメリカは空母3隻を集中した演習や日本・韓国との合同軍事演習の強化、テロ支援国家への再指定など、圧力の強化が続いていますが、幸いにも「圧力の強化」にとどまっています。

対峙する安倍政権は安定運営が続く

北朝鮮の行為に対応を迫られる日本ですが、司令塔である安倍政権は森友・家計学園問題などがあったものの、高止まりする支持率を背景に安定した政権運営を続けています。

10月に投開票がおこなわれた衆議院の解散総選挙は、直前の東京都議会選挙の勢いをかって国政進出をもくろんだ小池百合子都知事が率いる「希望の党」が自滅したことで絶対多数を獲得。安倍政権は2021年まで続く可能性が高まり、政権の安定とアベノミクス相場継続への期待から、「株高・円安」が意識されています。

退任か?続投か?注目の日銀総裁人事

こうした中、注目を集めはじめているのが「異次元の金融緩和」を推し進めている日本銀行(日銀)の黒田東彦総裁の任期満了による日銀総裁人事です。

大規模な資産買い入れを中心とする「異次元の金融緩和」を皮切りに、アベノミクス第一の矢として奮闘してきた黒田日銀総裁ですが、2017年の金融政策決定会合では7回全てで現状維持を決定。「2%の物価安定の目標」の達成時期も再び先送りされるなど、金融政策に手詰まり感が漂っています。

そんな中で黒田日銀総裁は、2018年4月に任期満了を迎えます。後任人事は全くの未定ですが、現時点では黒田日銀総裁の続投が基本路線とうわさされています。

混乱の続くヨーロッパ。各国の動向は?

ブレグジットで混乱が続くイギリス

2017年のイギリスは、欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)をめぐって混乱が続いた1年でした。

メイ首相は3月に正式な離脱交渉開始を宣言。2020年に予定されていた下院総選挙を前倒しして6月に投開票を実施しましたが、事前の予想に反して惨敗する結果となり、メイ首相が死に体(レームダック)状態になり、離脱交渉は遅々として進んでいません。

そんな状況下でイギリスの中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は、インフレ率の上振れを理由に利上げに踏み切りました。織り込み済みであったので為替レートに大きく影響しませんでしたが、インフレ率が高止まりするなら、追加利上げを迫られる可能性があります。

極端な主張が受け入れられたフランス大統領選挙

ユーロ圏で注目を集めたのが、フランスの大統領選挙でした。

4月の第1回投票では、「国民戦線」のルペン氏、「左翼党」のメランション氏、「共和党」のフィヨン氏、「前進!」のマクロン氏の4名が、四つ巴の戦いを繰り広げ、極右のルペン氏と、政治改革を進めてEUとの統合を深化させると訴えたマクロン氏が決選投票に進出。5月の決選投票では、フィヨン氏の支持も取り付けたマクロン氏が勝利し、39歳という若さで第25代フランス大統領に就任しました。

4月の第1回投票でマクロン氏とルペン氏が決選投票に進むことが判明すると、統合深化を掲げるマクロン氏が有利との予測からユーロ高となり、実際にマクロン氏が勝利したあとも、「セル・ザ・ファクト」で売られずに一段高となりました。

EUの旗振り役に暗雲?難民の扱いで割れるドイツ

フランスと並ぶEUの旗振り役であるドイツですが、安定した政権運営を続けてきたメルケル首相の行く末に暗雲が立ち込めはじめています。

9月の連邦議会選挙では、政権与党の「キリスト教民主・社会同盟(CDU)」が議席数を大きく減らし、難民受け入れに反対する極右政党が拡大しました。メルケル首相は与党との連立を模索したものの失敗に終わり、大統領の仲介で大連立政権の継続に向けた話し合いがはじまっています。

緩和縮小に向けて動きはじめた欧州中央銀行(ECB)

このように政治的なイベントが続いたユーロ圏ですが、金融政策を担当する欧州中央銀行(ECB)も、これらの動きを踏まえて動きはじめています。

2017年は金利面では一貫して現状維持を続けたものの、10月のECB理事会で2018年1月から資産買い入れを2018年9月まで延長し、同時に買い入れのペースを月額600億ユーロから300億ユーロに減額することを決定しました。

マーケットはこれを緩和逓減(テーパリング)と判断しましたが、ドラギECB総裁は会見で、「政策の『再調整』であってテーパリングではない」として、買い入れ額の増額や買い入れ期間の延長に含みを持たせています。

本格普及は間近なのか?仮想通貨人気が過熱

驚異的な利回りから注目を集めた仮想通貨

2016年から2017年にかけて注目を集めたのが、ビットコインをはじめとする「仮想通貨」です。「公共トランザクションログ」や「オープンソースプロトコル」、「Peer to Peer(P2P)型の決済網および暗号通貨」といった呪文のような仕組みに基づいて運用される仮想通貨は、2017年に取引価格が高騰したことで注目を集めました。

仮想通貨の代表格ともいえるビットコインで見ると、2017年1月に1万円分を購入してピーク時に手放していれば20万円のリターンが期待できるという、他の資産にはない値動きを記録しました。

普及のカギは取引制度や法規制の確立?

このような急激な値動きから取引参加者が急増している仮想通貨ですが、現時点では一部のトレーダーの「おもちゃ」であり、本格普及はこれからと言われています。

本格普及のためにはより安心・安全な取引を実現するための取引制度や法制度の確立が求められ、2018年の仮想通貨をめぐる大きなテーマの1つとなりそうです。

おわりに

国内では森友・加計学園問題が注目されましたが、海外でもトランプ大統領の過激とされる発言や政策や北朝鮮のミサイル発射実験、ヨーロッパ圏の政治的混乱など、さまざまな火種がありました。

2018年にこのどれかに火がつかないとも限らず、予想もしていなかった新しいリスクが浮かび上がる可能性もあります。2017年は一貫して好調を維持していたマーケットですが、2018年にはリスクオンの可能性を本格的に検討する時期なのかもしれません。

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