南シナ海の領有権問題とFXへの影響

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中国と東南アジア諸国の間の南シナ海の領有権問題に大きな進展がありました。

オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、「中国の主張する領域(九段線)は無効である」と裁定を下したのです。

この裁定はどのような影響を及ぼすのでしょうか。

今回は南シナ海の領有権問題の概要と今回の裁定がFXに与える影響を見てみましょう。

中国が主張する「九段線」とはなにか

今回の裁定の対象となった九段線とは、一体どのようなものなのでしょうか。

まずは九段線の概要と影響について見てみましょう。

九段線は中華民国(台湾)が設定した11本の線(十一段線)を元に1953年に中国が設定した境界線であり、南シナ海の領有権を主張する根拠としています。

九段線は時計回りに

  • バシー海峡
  • 北ルソン島トラフ
  • マニラ海溝
  • 南沙群島とフィリピンの間
  • パラワントラフ
  • 南沙群島とマレーシアの間
  • 南沙群島とインドネシアナトゥナ諸島の間
  • 南沙群島とベトナムの間
  • 西沙群島とベトナムの間

に設定されています。

九段線の存在はこの海域に積極的に進出を進める中国と、国境を接する東南アジア諸国との間で小競り合いの原因ともなっています。

1988年に発生したスプラトリー(南沙)諸島をめぐる中国とベトナムの衝突をきっかけに中国は強硬姿勢をあらわにし、九段線を実現する姿勢を強めました。

この姿勢に危機感を抱いた東南アジア諸国連合(Association of South-East Asian Nations = ASEAN)加盟諸国は、1991年のASEAN外相会議の開催式に中国を招待したことを皮切りに、外交の場で懸念事項を解決する努力をはじめます。

この努力は一定の成果をあげ、2002年11月にカンボジア・プノンペンで開催された第8回ASEANサミットで南シナ海行動宣言(Declaration on the Conduct of Parties in the South China Sea = DOC)が採択されました。

DOCは南シナ海における軍事的衝突の回避を主旨として策定され、

  • 国連憲章、国連海洋法条約(United Nations Convention on the Law of the Sea = UNCLOS)及び東南アジア友好協力条約(Treaty of Amity and Cooperation in Southeast Asia = TAC)を再確認
  • UNCLOSで確認されている公海航行及びその上空飛行の自由は南シナ海においても適用されること
  • 関係諸国が南シナ海における領有権を巡る紛争を武力による威嚇や武力の行使に訴えることなく平和的手段により解決
  • 無人の島嶼に新たに人員を常駐させないこと及び軍事演習の実施を自発的に告知すること

などからなる宣言です。

今回の裁定内容と各国の反応

平和的な解決に向けて努力が続けられた南シナ海の領有権問題は、中国の進出の活発化とともに緊張が激化し、2000年代に入ると小規模な衝突は日常茶飯事となりました。

この状況にしびれを切らした当事国のフィリピンが訴えたことで、今回の裁定が下されました。裁定内容と各国の反応について、報道から引用して見てみましょう。

(前略)

裁定は中国が実効支配する各礁を含め、スプラトリー(中国名・南沙)諸島の岩礁はすべて「島」ではなく、200カイリの排他的経済水域(EEZ)のない「岩」と、高潮時には水没して12カイリの領海も発生しない「低潮高地」と認定した。

裁定はまた、フィリピンのEEZ内での同国漁船の妨害や人工島造成などにより、中国がフィリピンの主権を侵害していると判断。中国による埋め立てがサンゴ礁の生態系を大きく損なっているとし、中国の環境保護に対する義務違反を認定した。

仲裁は2013年1月、フィリピンの申し立てを受けて開始。中国は参加を拒否したが、昨年11月には中国抜きで口頭弁論が開かれていた。

出典:【緊迫・南シナ海】中国の南シナ海支配認めず仲裁裁判所「法的根拠なし」と初判断 - 産経ニュース

国際的な仲裁裁判所が、中国には南シナ海の海域内の資源に対する歴史的な権利を主張する法的な根拠はないとの判断を下したことについて、米政府は12日、仲裁判断は最終的かつ紛争当事国を法的に拘束するものと見なすべきであり、緊張を高める理由にしてはならないとの見解を示した。

(後略)

出典:仲裁判断は法的拘束と見なすべき米見解、中国は不快感表明|ロイター

中国外務省の陸慷報道局長は12日、米国務省報道官が声明で南シナ海問題をめぐる仲裁裁判の判決に法的拘束力があり、中国などに順守を求めたことを受け、談話を発表し、「強烈な不満と断固たる反対」を表明した。米側に厳重に抗議したという。

(後略)

出典:米声明に「強烈な不満」=中国:時事ドットコム

今回の裁定はどのような影響を及ぼすのか

中国の主張を全面的に退けることとなった今回の裁定は、今後の南シナ海にどのような影響を与えると考えられるでしょうか。

今回の裁定自体は、同様に中国との領有権問題を抱える日本にも歓迎できる内容です。

しかし今回の裁定を素直に解釈すると、広大なEEZと豊富な海底資源を抱える日本の最南端である沖ノ鳥島(おきのとりしま)も島とは認められません。

今回の裁定は沖ノ鳥島が島か岩かの議論にとっても、何らかの影響を与えることは十分に考えられます。

また、国際的な判断が下された中で従来の強硬姿勢を維持すれば、昨年の「航行の自由」作戦から対立を深めるアメリカとの関係悪化が深刻になる懸念があります。

関係悪化が米中貿易の冷えこみにつながれば、従来の輸出主体の経済構造から新常態(ニューノーマル)への転換を急ぐ中国経済への悪影響は否定できません。

また、2016年に入ってから続く人民元役の傾向は、中国の通貨当局により意図的な通貨安であり、輸出の回復を図っていると言われています。

現状では中国の通貨当局の思惑に収まっている通貨安ですが、裁定の対応を誤って国際的な信頼を失えば、思惑を外れて人民元安が急速に進行する可能性もあります。

 
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おわりに

今回の裁定内容によって中国が強硬な態度を崩さなければ、金融市場だけではなく国際関係にも悪影響を及ぼす可能性は否定できません。

特に人民元は為替レートの決定に不透明な部分が多いため、取引をするのであればより注意を払う必要がありそうです。

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