ブラジル・ルセフ大統領弾劾成立とブラジルレアルの見通しは?

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南半球最大の石油採掘会社である「ペトロブラス」の政治献金をきっかけとするブラジル政界の大規模な汚職は、遂にブラジル初の女性大統領であるルセフ大統領の弾劾成立という事態をまねきました。

弾劾成立は、ブラジルの政治・経済や、通貨ブラジルレアルにどのように影響するのでしょうか。

今回はブラジルの政治・経済と今回の弾劾に至るまでの概要、今回の弾劾成立によるブラジル経済への影響やブラジルレアルの見通しを見てみましょう。

ブラジルの政治・経済と弾劾成立までの概要

まずはじめに、ブラジル経済の概要と今回のルセフ大統領の弾劾成立までの概要を見てみましょう。

世界第7位・南米最大の経済規模を誇るブラジル経済

ブラジルは比較的安価な労働力と豊富な天然資源を背景に、2014年時点で名目GDP2兆3,530億米ドルと世界第7位・南米最大の経済規模を持つ国家です。

しかし主な輸出先である中国の景気減速や資源価格低迷の影響を受けて、経済成長率は2014年で0.1%、2015年はマイナス3.7%と大きく落ち込み、2016年見通しはマイナス2.9%と景気後退に苦しんでいます。

経済成長率の低下によるインフレ懸念は根強く、抑制のために中央銀行による積極的な利上げを余儀なくされ、2015年9月時点で14.25%と高水準の金利が維持されています。

ブラジル初の女性大統領ルセフ大統領の就任から罷免まで

このように難しい舵取りを迫られる中で2011年にブラジル初の女性大統領として就任したのが、ジルマ・ルセフ(Dilma Vana Rousseff)前大統領です。

就任当初は良好な支持率を維持していたものの、2013年に交通機関の運賃値上げをきっかけに大規模な抗議運動(ブラジル抗議運動)が発生したことで急速に国民からの支持を失うこととなります。

2014年には支持率が3割台まで落ち込んだものの、ワールドカップでブラジル代表が勝ち上がるとともに批判の沈静化と支持率の上昇は急回復。しかし準決勝の「ミネイロンの悲劇」でブラジル代表が敗退したことで反発が再燃することとなります。

 

2014年の大統領選挙では決選投票を51.52%の僅差で制して再選を果たしましたが、2015年に政府系石油会社ペトロブラスから間接的に不正献金を受けていたことが明らかになり、300万人規模の反政府デモや弾劾審議の投票につながりました。

2016年8月31日に弾劾裁判による罷免投票がおこなわれ、賛成61・反対20により大統領職の罷免と180日間の公務停止が議決、ブラジル初の女性大統領はその職を追われることとなったのです。

ルセフ大統領弾劾とブラジルレアルへの影響

このようにして大統領職を追われたルセフ前大統領ですが、その影響はどのようなものがあるのでしょうか。

大統領代行が昇任するブラジル政治の動向

弾劾議決でルセフ前大統領が失職したことで、大統領職はミシェル・テメル(Michel Miguel Elias Temer Lulia)大統領代行が昇任して残る任期を引き継ぎました。

中道左派である民主運動党に所属するテメル大統領は、社会保障改革や経済改革を通じた財政健全化を政策として掲げているため、社会主義政党である労働者党の強い反発が予想されます。

 

既に弾劾と大統領交代の影響は外交に現れていて、ベネズエラやボリビア、エクアドルなどの南米諸国の左派政権は大使を召還する方針を表明しています。

9会合連続の金利据え置きと根強い利下げ観測

大統領弾劾と時期を同じくしてブラジル中央銀行の会合がおこなわれ、9期連続で政策金利を14.25%に据え置くことが決定・発表されました。

金利据え置きは事前予想通りだったため直接大きな影響はありませんでしたが、今回の声明で利下げの条件に言及したことで、インフレ率が低下による年内利下げの可能性は大きくなっています。

 

ブラジル中央銀行は声明で2017年にインフレ率を目標の4.5%まで低下させることを目指すと再度表明、前回声明の「金融緩和の余地はない」の文言を削除する一方で、金融緩和の実施は「2017年のインフレ目標達成をより強く確信させる要素次第」としました。

また、金融政策を柔軟にする要素として、緊縮財政措置の承認と食品インフレの収束をあげ、高金利と低調な経済がインフレ率の上昇率低下(ディスインフレ)のペースに与える影響も注視すると声明で明言しています。

 

インフレ抑制を目標としてブラジルの政策金利は2006年7月以来の高水準を維持していますが、社会保障改革や経済改革を通じた財政健全化を政策として掲げるテメル大統領により、目標とするインフレ抑制の追い風となることが予想されます。

ブラジルレアルはどうなるのか

このように高止まりしているインフレ率と政策金利の引き下げが期待されるブラジルですが、通貨ブラジルレアルにはどのように影響するのでしょうか。

 

2014年を通して1レアル=40円台から50円台で推移していたブラジルレアルは2015年から2016年にかけて急激に落ち込み、2016年2月には対円で史上最安値となる1レアル=28円台を記録、2016年9月時点でも1レアル=30円台で推移していました。

しかし、弾劾成立や中央銀行がインフレ目標の達成による金融緩和に言及したことなどから、テメル大統領のかかげる改革の推進や経済成長率の回復などにあわせてレアルの回復が期待されます。

 
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おわりに

今回の弾劾成立は低迷するブラジル経済回復への一歩となる期待はかなり大きなものであり、ブラジルレアルが回復に向かうかどうか、その動向は要注目と言えそうです。

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