相次ぐ主要国首脳の辞任とFX・外国為替への影響とは

相次ぐ主要国首脳の辞任とFX・外国為替への影響とは

6月のイギリスのEU離脱(ブレグジット)をめぐる国民投票や11月のアメリカでのトランプ・ショックなど、サプライズが続いた2016年の世界情勢ですが、12月に入って主要国首脳が相次いで辞任を表明する異常事態が起きています。

イタリアとニュージーランドという地球の反対で同じ日に起きたこの異常事態は、外国為替市場にどのように影響するのでしょうか。その概要と影響を見てみましょう。

同じ日に相次いだ主要国首脳の辞任表明

2016年12月5日は、イタリアのマッテオ・レンツィ首相とニュージーランドのジョン・キー首相が辞任する意向を発表する日となりました。それぞれ辞任に至る背景と、そのポイントを見てみましょう。

憲法改正をめぐる国民投票とイタリアのレンツィ首相の辞任

2016年12月5日(現地時間4日)におこなわれたイタリアの憲法改正の是非を問う国民投票は、最終開票結果では改憲支持が40.9%、改憲反対が59.1%と20ポイント近い大差をつけて反対派が優勢となりました。

レンツィ首相は、日本時間6日朝に記者会見を開き、国民投票の敗北を認め、「すべての責任は私にある。私の政権はきょう終わる」と述べて、速やかに辞任する意向を示しました。

一方、憲法改正にも強く訴えていたヨーロッパ連合(EU)離脱派の新興政党「五つ星運動」を率いるベッペ・グリッロ氏は、ブログに「Evviva! #HaVintoLaDemocrazia(万歳!国民の勝利だ)」と書き込み、投票結果を歓迎しています。

注目を集めたイタリアの憲法改正草案のポイント

イタリアでは歴史的な経緯から上院と下院がほぼ同等の権限を持ち、多数派が異なる「ねじれ」が生じると政権の存続が難しくなり、政権の不安定化の大きな原因でした。今回の憲法改正草案では、第二次世界大戦後に不安定な政局が続いた反省を踏まえて大規模な議会改革を中心として分散している権力を集約することを目的としていました。

憲法改正草案として提示された主なポイントを見てみると、

  • 上院の議員定数316を100に削減
  • 上院議員は、市長や州議員ら地方の代表者で主に構成
  • 法案審議や内閣信任・不信任決議採択の権限を下院に限定
  • 上院は下院で可決された法案の修正を提案できるが、下院は修正を拒否する権利を持つ
  • 州が持つ環境や運輸、エネルギーなどの行政権限を国の専権にする

など、政権与党は経済活性化に必要な改革を進めやすくなることが期待されていました。

「家庭の事情」によるニュージーランド・キー首相の辞任発表

レンツィ首相の辞任表明と前後して、高い支持率を誇るニュージーランドのジョン・キー首相が6日、家庭の事情を理由に電撃的に辞任表明をしました。

記者会見でキー首相は、辞任の理由について「家庭の事情」と述べつつも、「これまでで最も困難な決断だった。次に何をするかは分からない」と述べ、在任8年目の長期政権に手が届くなか、今が辞めるのに適切な時期と判断したと述べています。

2人の首脳の辞任の表明と国際政治への不安

レンツィ首相は、6日午後の閣議のあとにマッタレッラ大統領に辞表を提出するとしていましたが、政治的混乱を懸念した大統領に慰留されたことで、実際に辞任を提出するのは予算案承認後としました。

予算案の承認は今月中におこなわれる見通しですが、その後に再来年の議会選挙までの暫定選挙を発足させるか、議会選挙を前倒しするかを大統領が判断するなど、後任の首相候補の選定方法は明らかではない部分が残ります。

EUの主導的役割を果たしてきたイタリア首相の突然の辞任による政治的混乱は、ブレグジットに続く不安定要因となり、EUの先行きは更に見えにくくなったと言えます。

イタリアの混乱ほど注目されていないものの、ニュージーランドはトランプ・ショックにより発効の見通しが立たなくなっている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の成立に尽力してきた1人であり、今回の辞任表明によりTPPの発効の見通しはますます見えなくなったと言えます。

大きく動揺した外国為替市場と予想される影響

イタリアの国民投票はヨーロッパ圏での極右勢力の台頭への懸念から注目を集めていましたが、同日におこなわれたオーストリア大統領選挙では極右勢力が敗北したこともあり、ブレグジットやトランプ・ショックの値動きと比べるとささやかなものとなっています。

それでもユーロ/円(EUR/JPY)で1ユーロ = 118円台、米ドル/円(USD/JPY)で1ドル = 112円台など、トランプ・ショック以来の値動きを更に加速させるものとなりました。特にユーロは、今回の国民投票でEU離脱を掲げる「五つ星運動」が政権奪取の用意があると発言していることで、イギリスに続いてイタリアもEU離脱の懸念がたかまっています。

仮にイタリアのEU離脱が現実のものとなれば、イタリア発の世界的な金融危機が引き起こされる可能性は小さいものではありません。

おわりに

今回のイタリアの国民投票は、イギリスの国民投票やトランプ・ショックと異なり、事前に織り込み済みの部分があり、現時点ではそれほど大きな影響があったとは言えません。

しかし、更なる極右勢力の伸長によりイタリアのEU離脱が現実のものとなれば、世界規模での金融危機のきっかけになることは十分に考えられるため、来年(2017年)中に予定されている議会選挙までは、イタリアの政治状況は要注目と言えそうです。

このコラムに関連する記事

チェックリスト: 0 件
開く
全クリア
TOP