ゆうちょ銀行の預金限度額引き上げとFXへの影響

ゆうちょ_限度額引き上げ
 

2015年11月の株式同時上場をはじめとして、民営化以降も大きな注目を集める日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命の「郵政3社」ですが、2016年4月にゆうちょ銀行の預入限度額が1,000万円から1,300万円に引き上げられることがほぼ決定されました。

国内最大級の運用資産を持ち、その投資信託の販売本格化をはじめとして運用を本格化させることで、「民業圧迫」との批判も出ているゆうちょ銀行の預入限度額の引き上げは、市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

今回はゆうちょ銀行の預入限度額の引き上げと、それによる金融市場への影響について見てみましょう。

 

4月1日からゆうちょ銀行の限度額が1,300万円に引き上げ

預入限度額の引き上げは、どのように決定されたのでしょうか。その概要をニュース記事の引用で見てみましょう。

政府の郵政民営化委員会(委員長・増田寛也元総務相)は9日、ゆうちょ銀行の預入限度額を現行の1,000万円から1,300万円に引き上げることを盛り込んだ政令改正案を適当だとする意見書をまとめた。総務省と金融庁は今月中に政令改正を閣議決定し、4月1日の施行を目指す。かんぽ生命保険の加入限度額も1300万円から2000万円に上げる。(時事通信) ゆうちょ限度額、4月に1300万円に上げ=政府方針

こうしてみると突然公表・決定されたようにも思える今回のゆうちょ銀行の預入限度額の引き上げですが、実は監督官庁である総務省と金融庁では、今年1月から公に意見募集を実施していました。

   

しかし合わせて24件の意見が寄せられるにとどまり、そのほとんどが関係団体からの要望提出に留まるなど、周知徹底されていたとは言いにくい極めて低調な結果にとどまっています。

 

マイナス金利政策と裏腹の決定が下された理由はなにか

現在日本銀行(日銀)では、これまでの「異次元の金融緩和」を補完する手段として、ヨーロッパ圏に次いで日銀当座預金残高の一部に対してマイナス金利を付与する「マイナス金利政策」を採用しています。

このように日銀が民間銀行の預り資金の一部に対して金利を課すほど資金の流動性を上げるのに必死になっているのに、なぜ預入限度額の引き上げという流動性の向上とは逆行する決定がおこなわれたのでしょうか。

 

今回のゆうちょ銀行の預入限度額の引き上げは、今年7月に予定されている参議院選挙で有力な組織票とされている「全国郵便局長会(旧全国特定郵便局長会)の引き止めを目的としたものとの見方も出ています。

もちろん、このような政治的要求が色濃い決定は「民業圧迫」になるとして、7つの民間金融機関団体が反対の共同声明を発表しましたが、引き上げ幅が300万円と想定されたほど大きくなかったことや、引き上げにともなう利上げキャンペーンがないため民間金融機関からゆうちょ銀行への資金移動の可能性が低いことなどから、引き上げに同意することとなりました。

 

限度額引き上げで考えられるFXへの影響

このように政治的要素の濃いと思われる要求により、決定・実施されることとなったゆうちょ銀行の預入限度額の引き上げですが、この決定はFXにどのような影響を及ぼすと考えられるでしょうか。

 

現在ゆうちょ銀行では、資産運用の高度化を目的として、在野の有名ファンドマネージャーの招聘や郵便局窓口での投資信託販売強化など、総額175兆円にも及ぶ預金残高の有効な資産運用の方法を模索しています。

これだけ巨額の資金が一度に金融市場に流れこむことは考えにくいですが、今後の資産運用の方針によっては、このうちのかなりの部分が株式・債券市場に流入することは十分に考えられます。

日銀による「異次元の金融緩和」と合わせて金融市場にこれだけ大きな資金のうちの一部でも流入すると、2015年末から低迷の続く株価やマイナス利回りとなっている債券価格の押し上げを招いて、円の価値が高まる(円高になる)ことが期待できます。

これに対して日銀の異次元の金融緩和と歩調を合わせておこなわれている安倍首相の経済政策パッケージである「アベノミクス」では、為替レートを円安方向に誘導することにより輸出を増やして景気回復を狙うことを打ち出しています。

 

円高・円安では取るべき取引戦略は真逆のものになるため、今後の株式市場や外国為替市場がどのような方向に動くかは注意が必要と言えそうです。

 

おわりに

現状ではゆうちょ銀行の預入限度額と、かんぽ生命の加入限度額の引き上げが決定されただけであり、引き上げが金融市場にどのような影響を及ぼすかについては全くの未知数です。

特に預金残高が175兆円にも及ぶゆうちょ銀行が、今後どのような方針に基いて資産運用をおこなうかは金融市場に大きな影響を及ぼすため、注目する必要があると言えるでしょう。

このコラムに関連する記事

TOP