注目を集めるFRBのバランスシートの縮小と実施時期は?

注目を集めるFRBのバランスシートの縮小と実施時期は?

米連邦準備理事会(Federal Reserve Board = FRB)が公表した3月の連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee = FOMC)議事録により、メンバーの大半が年内にもFRBのバランスシート(資産)縮小をはじめるべきと考えていたことが明らかになりました。

総額約4兆5千億ドルとも言われる、FRBのバランスシートの早期縮小は、どのような判断にもとづいておこなわれるのでしょうか。量的金融緩和政策(Quantitative Easing = QE)の内容を振りかえりながら、その実施時期を探ってみましょう。

金融危機への対策。「量的金融緩和政策(QE)」とは?

FRBがこれほど巨大なバランスシートを持つことになったのは、世界金融危機への対応として導入された「量的金融緩和政策(Quantitative Easing = QE)」が原因です。

従来の金利操作を中心とする金融政策(伝統的金融政策)に続く資産買い入れを目玉とする金融政策(非伝統的金融政策)として導入されたQEは、2009年と2010年、2012年にかけて3回実施されましたが、特に注目を集めたのが2010年(QE2)と2012年(QE3)です。

国債の大規模買い入れを実施したQE2

QE2は2010年11月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合後に発表され、2009年のQEに続く第2弾の量的金融緩和政策として導入されました。

長期金利の押し下げを目標としたQE2では、1カ月約750億ドルのペースでの米国債買い入れをおこない、最終的に8カ月間にわたった買い入れにより、FRBの購入した米国債の総額は6千億ドルに達しています。

住宅ローン担保証券(MBS)購入に踏み切ったQE3

2012年9月のFOMC会合後に発表されたQE3は、不動産市場の活性化と雇用環境の改善を目的とした金融政策です。

QE、QE2と合わせて新たに住宅ローン担保証券(MBS)の月額400億ドルの購入に踏み切り、終了時期を「雇用市場が改善するまで・インフレ率が抑制されている限り継続する」と発表したQE3は市場に大きなインパクトを与えました。

緩和逓減(テーパリング)と金融政策の正常化

このように大規模な量的金融緩和政策を短期間で立て続けにおこなったことでアメリカ経済は一時の世界金融危機の痛手から立ち直ることに成功しましたが、FRBのバランスシートは大きく拡大します。過去に例を見ない大規模な金融政策となったQE3は、導入から1年4カ月がたった2014年1月から徐々に買い入れ規模の縮小(緩和逓減 = テーパリング)をはじめ、ほぼ1年をかけた2014年10月に終了しました。

ゼロ金利政策やQEの実施によりアメリカの景気回復に一定のめどが立ったことで注目を集めているのが、金融政策を正常化するためのゼロ金利政策の解除・利上げとQEで膨らんだバランスシートの縮小の実施時期です。

バランスシートの縮小実施に向けてまとまりつつあるFOMC

発表されたFOMCの議事録要旨によれば、9対1の賛成多数で追加利上げを決定する一方、再投資の停止の時期やタイミングについて議論がおこなわれたものの、一部のFRB理事はなおも慎重であると報じられています。報道を引用して議事録の内容や参加者の発言を見てみましょう。

(前略)

議事要旨によると、FOMCに参加した政策当局者のほぼ全員が、バランスシート縮小のタイミングは、経済や金融の状態に基づいて決まるとの意見で一致。総じて財務省証券とMBSの双方について段階的、あるいは一時に規模を縮小するのが望ましいとの判断を示した。

再投資の段階的な縮小は金融市場に混乱を引き起こす可能性が低いとされる一方、一度に再投資を止める場合は「情報発信が簡単な上、いくらか迅速なバランスシートの正常化が可能になる」とされた。

参加者は「政策変更を行うかなり前に」市場と意思疎通を図るべきとの考えで一致した。

(後略)

引用:バランスシート縮小、年内着手を=米FOMC議事要旨

ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は31日に参加したネット上での質疑応答で「利上げを急ぐ理由はない」と主張した。物価安定と雇用の最大化が、米連邦準備理事会(FRB)が定める目標水準に達していないためという。量的緩和で膨らんだFRBのバランスシート縮小については、市場に前もって警告するためにも詳細な実施計画を公表するのが望ましいと述べた。

(後略)

引用:米ミネアポリス連銀総裁「利上げ急ぐ理由ない」 物価と雇用、目標に達せず:日本経済新聞

米連邦準備理事会(FRB)のタルーロ理事は5日朝の米CNBCテレビのインタビューで「4~6月期の米国の経済指標はかなり良くなる可能性が高い」との見方を示した。「1~3月期は毎年予想をやや下回る傾向がある」とし、季節要因で一時的に鈍化した経済活動が勢いを取り戻すという。

(後略)

引用:タルーロFRB理事「4~6月の米経済指標はかなり良くなる」:日本経済新聞

米サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は6日、量的金融緩和で膨らんだ資産規模の縮小について「年末ごろに始めるのが妥当だ」との認識を示した。そのうえで、バランスシートの水準を正常化するには「5年程度はかかる」とも述べた。

(後略)

引用:米サンフランシスコ連銀総裁、資産規模の縮小開始「年末が妥当」:日本経済新聞

バランスシートの縮小時期に注目が集まる理由とは?

FRBのバランスシートの縮小が注目を集めている理由として、保有する債券の償還時期とFRBが実施しているゼロ金利政策解除・利上げとの関係があります。

QEでは短期間で巨額の買い入れをおこなったため、保有する債券はほぼ同時期に償還時期をむかえますが、その最初の山が2018年です。これまで償還時期を迎えた債券は再投資をしてきましたが、現状の金利では利回りの面で不利であり、バランスシートの縮小が急がれているのです。

また、現在のイエレンFRB議長の人気が2018年2月までであり、任期中にバランスシートの縮小に動くのであれば、できるだけ早く方針を決定する必要があることも影響しています。

おわりに

先んじて景気拡大のめどが立ったことで、アメリカの中央銀行であるFRBは金融政策の正常化を探っています。

対照的にアベノミクスの効果が薄れてきている日本銀行(日銀)や加盟国の財政格差が足を引っ張る欧州中央銀行(ECB)は緩和政策の維持・拡大を余儀なくされています。

各国中央銀行の金融政策の動向が外国為替市場に与える影響は大きく、アメリカをはじめとする各国が行う緩和政策の動向は、今後も要注目と言えるでしょう。

参考サイト

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