堅調に拡大するアメリカ経済と2018年の利上げ見通し

堅調に拡大するアメリカ経済と2018年の利上げ見通し

アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は、2017年12月の連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンドレート(FF金利)の誘導目標を1.25から1.50%に引き上げることを決定しました。

同時に発表されたFOMC声明では、2018年から2019年にかけてそれぞれ3回ずつ利上げが実施され、金利は長期水準の2.8%に達するとの見込みを公表していますが、その背景はどのようなものでしょうか。

今回は、FRBが発表した2018年の経済見通しを、FOMCの声明から引用しながら見てみましょう。

上方修正された成長率予想と据え置かれた利上げ予想

9月の見通しから上方修正された2018年の成長率予想

FRBは今回発表した経済見通しで、2018年の成長率は前回9月の2.1%から上方修正して2.5%、失業率は下方修正して4.1%から3.9%になると予想しています。インフレ率については、来年もFRBの目標である2%をやや下回る水準にとどまるとの見方を示しています。

トランプ大統領の進める税制改革の影響は不透明

今回の見通しではFRBはトランプ政権が進めている税制改革法案について、2018年の経済成長率を押し上げる効果はあるものの、その影響は長続きしないとする判断を示しました。

会見の中でイエレンFRB議長は、トランプ政権が提案する税制改革案が経済見通しを引き上げる要因となり、「大半のメンバーは議会が検討中の財政刺激策の影響を見通しに織り込んだ」ものの、具体的な効果は、「税制の変更は今後数年、経済活動を一定程度押し上げる公算が大きいものの、マクロ経済への効果の規模や時期については依然不透明だ」としています。

予定通り進むバランスシート縮小の加速

また2018年1月からは、予定通り保有する債券の再投資の縮小を進め、アメリカ国債は月額120億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を同80億ドルとしてバランスシートの縮小を進めることも明らかにしています。

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ハリケーン「ハービー」「イルマ」の影響は限定的

FOMCは声明の中で、2017年8月と9月にかけて相次いで上陸したハリケーン「ハービー」と「イルマ」による被害と被災地復興は、「数カ月間の経済活動や雇用、インフレ率に影響を及ぼしたものの、国内経済の見通しを著しく変えなかった」と認識していることを明らかにしました。

FOMCは今後も金融政策の運営姿勢の調整により、経済活動が緩やかなペースで拡大して、労働市場の状況は力強さを維持すると引き続き予測しています。

インフレ率は2%前後で安定するものと予想

11月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、労働市場が引き締まり続け、経済活動が堅調な速度で拡大しているという認識を明らかにしています。

景気の重要な指標の1つである前年同月比で見たインフレ率は短期的には引き続き2%をやや下回るものの、中期的には委員会の目標である2%近辺で安定すると予測しています。インフレ率が安定しているため、短期的な経済見通しへのリスクはおおむね均衡していると判断していますが、従来通り物価の動向を注意深く監視していくようです。

金利引き上げができる経済状況は続くと予想

FOMCはインフレ率の実際の進捗と予想される進展を注視しますが、現在の経済状況は「フェデラルファンドレート(FF金利)の緩やかな引き上げを正当化する形で進む」と予測しています。

FF金利の目標誘導レンジの調整の時期と規模の決定には、労働指標やインフレ指標、金融動向などの幅広い情報を考慮しますが、重要な判断材料として、「目標とする最大雇用とインフレ率との比較で経済の実績と見通し」を上げています。

現在のインフレ率が目標の2%を下回っているため、当面のFF金利は長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベルで推移する可能性があるものの、実際の経済状況に応じて柔軟に変更を加える方針を明らかにしています。

退任前に楽観的な見通しを示したイエレンFRB議長

イエレン議長は退任前の最後となる記者会見で、「現時点でアメリカ経済は堅調に推移している。世界経済も好調であり、われわれは同時発生的な拡大の中にいる」として、アメリカ経済・世界経済は堅調に成長しているとの見通しを示しました。

目標水準をやや下回る水準にとどまっているインフレ率の引き上げは、「一時的な要因によるものであり、(後任のパウエル次期FRB議長に)解決を託す重要な未完の任務」としています。

おわりに

今回のFF金利の引き上げとFOMCの声明からもうかがえるように、アメリカ経済が比較的堅調に推移していることから、FRBは金融政策の正常化を進めていますが、インフレ率が目標から下振れして推移しているなど、気になる要素もあります。

世界の国内総生産(GDP)の4割を占めるアメリカ経済の動向は世界経済にも大きく影響するため、アメリカ経済を左右するFOMC会合の決定には要注目であることには変わりがないようです。

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