ECBの2015年12月利上げ観測と外国為替市場への影響

ECB総裁10月発言_アイキャッチ

 

10月22日のECB(European Central Bank =ヨーロッパ中央銀行)の理事会を受けてドラギECB総裁は、10月理事会では既定の金融政策をそのまま継続することを発表したものの、次回12月理事会で追加の金融緩和を行う可能性があることを示唆しました。

今回は、ドラギECB総裁の発言要旨と、相場への影響を見てみましょう。

 

今回の決定内容とドラギECB総裁の発言要旨

ロイター電が、今回の理事会の決定内容とドラギECB総裁の発言要旨をまとめています。ここから一部引用して、今回のECB理事会の決定内容と発言内容を見てみましょう。

 

ECB理事会の決定内容

主要政策金利は軒並み据え置きのままとされました。具体的には、リファイナンス金利は0.05%、上限金利の限界貸出金利は0.30%に、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.20%と設定のまま据え置きとされました。

更に、インフレ率を中長期的に2%を若干下回る水準まで回復させることを目標とすることも変わらずに維持するとしています。

 

ドラギECB総裁の発言要旨

需要下振れを背景とする原油安が起因となりインフレ期待が低下し、預金金利引き下げを含むあらゆる手段を検討するに至ったと経緯を説明。「必要なら行動する用意がある。いかなる手段も排除しない」と言明した。

その上で「理事会は担当部署にあらゆる手段の利点とコストを調査するよう指示した。待ちの姿勢ではなく、取り組みを検証していく」とした。

12月は、スタッフ予想で新たなインフレ見通しが示されるため、決定を下す上でより望ましい状況にあると指摘した。

ECBが注視する主要リスクとしてユーロ高、商品(コモディティ)価格の下落、新興国の経済減速の3つを強調。昨年の原油急落によるベース効果が後退するため、その頃までにインフレ押し上げを支援するかもしれないとし、「こうした状況を踏まえ、金融政策の緩和度合いを12月の理事会で見直す必要がある」と言明した。

ECB、12月の追加緩和示唆 利下げ含め「あらゆる手段」検討|Reuters

 
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為替・株式の反応

次回理事会では追加緩和の可能性も否定しないとする今回のドラギECB総裁の発言を受けて、市場はどのような反応を示したでしょうか。

発言直後からの1時間足での為替チャートと、日足での株式の値動きを見てみると、今回の発言をひとまず好感したことが明確にあらわれています。

為替

20151023_eurusd

出典:Yahoo!ファイナンス – ユーロ/米ドル(EUR/USD)

 

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出典:Yahoo!ファイナンス - 米ドル/日本円(USD/JPY)

 

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出典:Yahoo!ファイナンス – ユーロ/日本円(EUR/JPY)

 

チャートを見ると明確に現れていますが、緩和期待で22日のユーロはECBの議事録とドラギECB総裁の会見直後からどの通貨に対しても売られる状態となり、ユーロ/米ドルでは直近の9ヶ月の中では最大の下落率で1ヶ月ぶりの安値、ユーロ/日本円でも3月以来の下げ幅とともに10月頭以来の安値を記録しています。

株式

ドラギECB総裁の追加緩和発言は、為替だけではなく、株式にも大きな影響を与えました。

特にNY株式市場が、今回の発言と好調な米主要企業の決算や住宅市況を好感して、ダウ平均は前日終値と比べて320.55ドル高い1万7489.16ドルと順調に推移しました。

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出典:Yahoo!ファイナンス – NYダウ

 

ここしばらくは値動きが冴えなかった日経平均も、23日は前日終値よりも400円以上も高い水準で始まり、終値でも389円43銭高い18,825円30銭で終わりました。

20151023_日経平均

出典:Yahoo!ファイナンス - 日経平均株価

 

このように、今回のドラギECB総裁の発言は市場に良い材料と受け取られ、追加緩和へ大きく弾みがついた格好になりましたが、その真意はどこにあるのでしょうか?

今回の発言の真意はどこにあるか?

このように追加緩和発言により世界の為替・株式市場は日足で見ると高騰しましたが、今回は「追加緩和を含んだあらゆる手段を排除しない」と発言だけです。

今回の理事会では追加緩和どころか、何らかの新しい金融政策が決定したわけではなく、現状の金融政策を据え置くとしたことに変わりありません。

 

ドラギECB総裁の発言を市場は好感していますが、名指しで取り上げられている中国を始めとする新興国の景気動向の不透明さは依然として拭えていません。

更に、ISIS(Islamic State of Iraq and Syria =アイシル)による中東難民問題や、ロシアによるウクライナなどへの軍事侵攻など、ヨーロッパ特有の諸問題が大きなリスク要因として存在しています。

また、ユーロ圏の経済の中心でありこれまで好調を維持してきたドイツは、9月に発覚したフォルクスワーゲンの排ガス検査不正により、先行きが見通せなくなっています。

これらのことから考えると、今回の発言は12月理事会で決定する金融政策の内容を吟味するための観測気球としての発言である可能性が強いことが考えられます。

 

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おわりに

ヨーロッパから大きな材料が出されましたが、アメリカは年内の利上げ観測からの緩和政策の終了、日本では日銀の追加緩和への期待が根強く囁かれるなど、世界経済の状況は好調不調が入り乱れるまだら模様です。

このようなときには、ある程度のリスクを負って取引をしなければ利益は得られません。しかし、不必要なリスクを負わないよう、リスク管理と資金管理には十分に注意して取引を行うようにしましょう。

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