出口戦略?欧州中央銀行(ECB)の量的緩和政策延長の背景は

出口戦略?欧州中央銀行(ECB)の量的緩和政策延長の背景は

欧州中央銀行(ECB)は2016年12月8日の理事会で、量的緩和政策の実施を2017年12月まで延長し、同時に購入規模を月800億ユーロ(約9兆7600億円)から月600億ユーロ(約7兆2800億円)に減額すると決定しました。

今回の決定は量的緩和政策の縮小(テーパリング)ではないとしていますが、拡大を続けてきた量的緩和政策の方向転換には、どのような判断があるのでしょうか。その背景を見てみましょう。

緩やかなインフレの継続と底支えとなる量的緩和政策の継続

今回の買入規模縮小の決定の背景には、イギリスのEU離脱(ブレグジット)やトランプ・ショックなどの様々な影響がありながら、物価上昇(インフレ)が緩やかに続いていることが大きな要因と言われています。

11月のユーロ圏のインフレ率(速報値)は前年同月比0.6%と、目標とする「2%弱」を下回るものの、マイナス0.2%を記録した4月以降、弱いながらも改善を続けています。

ECBは声明で「見通しの悪化や金融情勢がインフレの道筋の持続的な調整に向けた一段の進展に整合しないものになった場合、理事会は買入プログラムの規模拡大、もしくは買入期間の延長を決定する」と発表。インフレ傾向が続かなければ再び買入規模を拡大する余地を残しています。

ECB理事会後のドラギ総裁発言要旨

今回のECB理事会の政策決定の背景にはどのような根拠があったのでしょうか。ロイターが報じたドラギECB総裁の会見発言の中から、判断の根拠と思われるトピックを見てみましょう。

<トランプ効果>

トランプ氏の米大統領選勝利や、英国のEU離脱(ブレグジット)決定、イタリア国民投票の結果といった重要イベントの影響を見極めるのは困難だ。市場は予想以上に底堅いことを証明した。多くの理由、原因があるだろう。各規制当局が講じた措置が支援したことは間違いない。これらのイベントによる本格的な影響は中長期的に出てくるだろう。こうした影響を現時点で評価するのは非常に難しい。

<不透明な政治情勢への対応>

向こう1年間の選挙日程を見れば良い。それ自体が不透明な情勢の要因だ。新興国市場経済に起きていることを見てほしい。かなり不透明な状況だ。政治関係が大半を占め、われわれに対処できるかは議論の余地がある。各国中銀にできることは、気をつけて対処し続けることだ。 他方、改革が必要な国々は、不透明な政治情勢一般に関係なく、改革を実行しなければならない。不透明な情勢に対処する最善の方策は実際のところ、成長や雇用を回復させ、雇用を創出することだからだ。

<テーパリングの意味>

テーパリングという言葉は、誰が使うかによって意味が変わってくるものの、自然に解釈するなら、買入が段階的にゼロに向かう政策を指すものである。それはこれまで議論されておらず、議題にも上がっていない。

<インフレトレンドが上向く兆候見られず>

(インフレ見通しの引き上げは)おおむねエネルギー価格の前年比での上昇を反映している。基調的なインフレに説得力のある上昇トレンドが出る兆候はまだ見られていない。

<世界経済の回復強まる>

世界経済の回復は多少ながら強まる兆候が見受けられる。一方、ユーロ圏の経済成長は構造改革の進ちょくの遅れや一部セクターで残っているバランスシート調整によって圧迫される見通し。

<回復は強まりつつある>

(政策の)調整は、ユーロ圏経済の緩やかではあるが強まりつつある回復、およびいまだ抑制されている基調的なインフレ圧力を反映している。

出典:ECB理事会後のドラギ総裁の発言要旨|ロイター

ECB理事会後の外国為替市場の動向

ヨーロッパの外国為替市場では発表直後は1円近い円安・ユーロ高となる1ユーロ=123円台前半を記録したものの、発表後には円高・ユーロ安に転じ、1ユーロ=121円台前半を記録するなど、不安定な動きとなりました。

ドル相場も円安傾向を維持しつつも、1ドル = 113円台後半から114円台前半の間で行き来するなど、こちらも不安定な動きが続いています。

おわりに

アメリカに続いてヨーロッパも景気回復傾向が続き、金融政策の正常化を探っていますが、ブレグジットやトランプ・ショックなどの不安定要因が続き、その実現は全く不透明です。

今後はこれまで以上に各国中央銀行の金融政策の動向には要注目と言えるでしょう。

参考サイト

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