続く北朝鮮のミサイル実験。外国為替市場にはどう影響する?

続く北朝鮮のミサイル実験。外国為替市場にはどう影響する?

度重なる制止にもかかわらず、ミサイル発射実験を続ける朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、アメリカ本土に届く弾道ミサイルの開発に成功するなど、国際社会の脅威となりつつあります。気になるのは、ミサイル発射や北朝鮮が弾道ミサイルを保有することが、外国為替市場にどのように影響するのかという点です。

今回は、北朝鮮の3代目指導体制になってから急増しているミサイル実験と、日本・国際社会の対応、ミサイル発射が外国為替市場に与える影響を見てみましょう。

金正恩体制下で急増しているミサイル発射実験

1990年代からすでにミサイル発射能力を保有していた北朝鮮ですが、3代目の金正恩(キム・ジョンウン)体制になってからその開発は急ピッチで進められています。2017年に入ってからおこなわれたミサイル発射のうち、成功したものを見てみましょう。

2月12日

平安北道(ピョンアンブクどう)の車両試験場から準中距離弾道ミサイル(MRBM)「北極星2号」を発射。意図的に高射角で発射され(ロフテッド軌道)、高度550キロ、距離500キロを飛行して日本海に落下。

3月6日

平安北道東倉里(トンチャンリ)から4発が発射され、約1000キロを飛行して3発の弾頭が男鹿半島から西300キロから350キロの排他的経済水域(EEZ)内部に落下。

4月5日

咸鏡南道新浦(ハムギョンナムどう・シンポ)から1発を発射。高度189キロ、距離60キロを飛行して日本海に落下。

5月14日

平安北道亀城 (クソン) から中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星12」を発射。高度2111キロ、水平距離787キロを飛行して日本海に落下。

5月21日

平安南道北倉(ピョンアンナムどう・プクチャン)から準中距離弾道ミサイル(MRBM)「北極星2号」を発射。高度500キロ、距離560キロを飛行して日本海に落下。

7月4日

平安北道亀城付近から大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」を発射。高度2802キロ、距離933キロを飛行したのち、日本の排他的経済水域(EEZ)の日本海側に落下。

7月28日

慈江道舞坪里(チャガンどう・ムンピョリ)から2度目の「火星14」の発射。高度3724.9キロに達し、飛行時間47分12秒で998キロを飛行したのち、弾頭は日本海の日本の排他的経済水域内に落下。

8月29日

平壌郊外の順安(スナン)付近から2度目の「火星12」の発射。日本列島の上空を通過する飛行経路を取り、高度550キロ、水平距離2700キロを飛行して、襟裳岬の東1180㎞の太平洋に落下。

この他の発射実験

北朝鮮はこの他にも短距離弾道ミサイル「スカッド」や、準中距離弾道ミサイル「ノドン」、潜水艦発射弾道ミサイル「北極星1号」などの各種ミサイルを数十発から数百発単位で準備し、不定期に各地から発射実験を繰り返しています。

ミサイル実験に対する周辺国の対応

このように国際社会の重大なリスク要因となっている北朝鮮に対して、国際社会は核・ミサイル開発の放棄を求めて対話と圧力を続けています。北朝鮮の周辺国がどのような対応をとっているのかをまとめました。

アメリカ

中東では積極的な軍事行動を続けているアメリカですが、アジア地域では対話と経済制裁による比較的ソフトな対応を続けていました。しかしトランプ大統領の就任にともない、軍事行動も視野に入れた行動が強まっています。

韓国

国境を接する韓国は、「太陽政策」で一時関係改善に向かっていましたが、北朝鮮が核実験を続けたことで関係が悪化。最近でもコルベット「天安(チョナン)」撃沈や延坪島(ヨンピョンド)砲撃など、小規模な衝突が発生しています。

ミサイル実験にはアメリカとの合同軍事演習の中で爆撃演習を公開するなど、強硬な姿勢を示しています。

中国

比較的北朝鮮との関係が良好な中国は国連安保理決議でも反対票を投じるなど、国際社会での数少ない北朝鮮の友好国です。しかしミサイル実験を繰りかえす現状で関係が冷え込み、アメリカと歩調を合わせる動きも見られます。

日本

度重なるミサイルの排他的経済水域(EEZ)内への落下や領域通過により、過去に例がない強硬な対応しているのが日本です。

領土・領海などへの落下に備えて自衛隊に破壊措置命令を発令。弾道ミサイル防衛(BMD)部隊を常時展開すると同時に、国際社会の制裁にさらに上積みした独自制裁を実施するなど、「弱腰外交」といわれる日本外交の中では、例外的に強硬な姿勢を崩していません。

国際社会

北朝鮮と国交を樹立している国はごく限られているため、北朝鮮の行動に好意的な国はほぼ皆無といえます。各国は国連安保理決議に基づく経済制裁や、北朝鮮を含む周辺国会議(六者会合)による対話など、さまざまなコンタクトを図っていますが、その成果は思わしくありません。

北朝鮮のミサイル発射は外国為替市場にどう影響する?

2017年に限っても複数回のミサイル発射をおこなうなど、北朝鮮の動向は国際社会にとって大きなリスクであり、外国為替市場にも大きな影響を与えています。

8月29日の発射では、事前通告のない発射であったことなどから円はドルとユーロに対して大きく動き、いわゆる「有事の円買い」の傾向が見られました。取引の中にはミサイル実験による有事の円買いを踏まえたアルゴリズム取引らしい取引が観測されるなど、トレーダーの間ではミサイル発射も材料の一つとして扱われつつあります。

おわりに

日本をはじめとする周辺国のみならず、国際社会にも大きなリスク要因となっている北朝鮮のミサイル実験は、外国為替市場では円を動かす、大きな要因の一つとして注目されつつあります。

いざというときには命を守る行動がもちろん最優先ですが、ミサイル発射を考慮した取引もリターンを大きくするためには考える必要があるのかもしれません。

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