トランプ大統領の誕生と市場が警戒する「トランプ・リスク」

トランプ大統領の誕生と市場が警戒する「トランプ・リスク」

2016年アメリカ大統領選挙の投開票が11月9日(現地時間11月8日)におこなわれ、予想をくつがえして共和党候補として立候補した不動産王のドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ大統領となりました。

「強いアメリカの復活」を訴える超保守的な主張や選挙期間中から暴言・失言が絶えなかったことから、「トランプ・リスク」がにわかにクローズアップされています。

トランプ氏の略歴と主張する政策、トランプ・リスクについて見てみましょう。

ドナルド・トランプ氏の略歴

ドナルド・ジョン・トランプ(Donald John Trump、1946年6月14日 - )は、アメリカでも指折りの実業家であり、「アメリカの不動産王」として知られていました。

自身の名前を冠した不動産会社トランプ・オーガナイゼーション(The Trump Organization)の会長兼社長であり、その経歴やセルフブランディング、歯に衣着せぬコメントで知られる、アメリカの典型的な富裕層(セレブリティ)の1人です。

メディアへの露出機会も多く、「お前はクビだ(You're fired)」の決め台詞で知られるリアリティ番組「アプレンティス(The Apprentice)」の主演兼プロデューサーとして参加していることをはじめ、数多くの出演履歴で知られています。

「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ氏の主張する政策

保守主義かつキリスト教の立場を取る共和党の大統領候補でありながら、トランプ氏が訴えた政策は共和党の主流派とは大きく異なり、その内容は議論を呼んでいます。トランプ氏の主張した主な政策を見てみましょう。

アメリカ第一主義とモンロー主義を掲げる経済政策

日本や中国、メキシコなどを名指しでアメリカからの輸入品を排除することでアメリカから「略奪している」と非難。環太平洋連携協定(TPP)に署名せず、別途北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を目指すとしています。

IS打倒とアメリカ軍増強、同盟見直しを主張する安全保障政策

シリア・イラクで猛威をふるうイスラミックステート(IS)を「すぐに<打ち負かす>」として、オバマ政権のシリア反政府勢力の支援を重視する方針をあらため、IS打倒を最優先に掲げ、ロシアとの協力にも積極的です。

アサド大統領による弾圧はシリア国内に難民のための「安全地帯」の設置と湾岸諸国に資金拠出を要求しています。

また、「誰もアメリカに干渉できないよう」アメリカ軍が望まない装備の購入に大金を費やしている現状を批判し、アメリカ軍の規模と能力を拡充を約束。日本などの安全保障条約を結んでいる国には経費負担の増額を求め、同意が得られなければ同盟の解消も示唆しています。

減税と税制簡素化を中心とする税制改革

7つの税率区分数を減らすことをはじめ、所得税率や長期キャピタルゲイン・配当収入税の引き下げや低所得者層の所得税免除などを主張。法人税も引き下げやアメリカ企業の海外留保利益のみなし課税の導入、課税繰り延べの廃止を主張しています。

雇用促進とコスト削減を掲げる経済・医療制度政策

雇用促進と政府のコスト削減で19兆ドルの財政赤字の解消を公約。メディケアとメディケイド、退職者向けの社会保障は維持する一方、オバマケアの撤回と医療貯蓄口座制度への置き換え、教育省と環境保護局(EPA)の規模縮小を訴えています。

舌禍の元となっている移民対策

「メキシコとの国境に「高い壁」を築く」と放言し、100億ドル以上と試算される建設費用はメキシコが費用を負担しなければ「重大な結果を招く」と指摘。不法滞在者のメキシコ向け送金の「押収」やメキシコ人労働者に対するビザや越境手数料を引き上げ、メキシコ製品への関税課税や対外援助を削減も「選択肢」としています。

また、新たなグリーンカード(アメリカ永住権)の発行「中止」やアメリカ人労働者の優先的な雇用義務付け、不法滞在者の強制送還や協力しない「(不法移民)保護都市」には連邦政府資金提供の留保などを主張しています。

トランプ大統領の誕生と心配される「トランプ・リスク」

このようにアメリカ第一主義に則った政策を掲げたトランプ氏が第45代アメリカ大統領に就任したことで、想定外の政策によりアメリカ経済や金融市場が混乱する「トランプ・リスク」が懸念されています。

金融市場がトランプ・リスクを恐れる原因には、6月のイギリスのEU離脱(ブレグジット)をめぐる国民投票で、事前の予想を覆して欧州連合(EU)離脱派が勝利した苦い経験があります。

直前の世論調査では残留派が優勢だっただけ金融市場は大きく混乱、主要な株式市場の株価指数は暴落し、安全資産である日本円1ドル = 99円台を記録するなど、急激な円高進行となりました。

投資家の多くが「トランプ・リスク」を警戒することで株式市場では「恐怖指数」として知られるVIX指数が急上昇して6月以来の水準を記録。

外国為替市場では安全資産とされる日本円に人気が集まり急激な円高になるなど、金融市場はトランプ大統領の誕生に対して警戒の色を隠していません。

おわりに

当確をツイートしたAP通信が「Celebrity businessman and political novice(著名なビジネスマンだが政治の素人)」と評したように、政治実績は皆無であり、その政治的手腕は未知数です。

今後の発言や政策によってはFXに限らず日常生活にも大きく影響してくるため、その発言や政策にはしばらく要注目と言えるでしょう。

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