消費税引き上げ再延期とFXへの影響

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6月1日の記者会見で、来年(2017年)4月に予定されていた消費税率の10%への引き上げが再延期され、2019年9月まで繰り延べとしたことが安倍首相本人から発表されました。

消費税引き上げ再延期は、FXにどのような影響を与えるのでしょうか。

今回はもっとも身近な税金である消費税の概要と特徴、消費税引き上げ再延期がFXに与える影響について見てみましょう。

 

「消費税」とはどのような税金なのか

そもそも、消費税とはどのような性格の税金なのでしょうか。最初に消費税の概要とその特徴、消費税に関するこれまでの主なトピックを振りかえって見ましょう。

 

消費税という税金の概要

消費税とは、消費全般に対して広く公平に課税する間接税であり、国内ほぼ全ての取引やサービスの提供、保税地域から引き取られる外国貨物が課税対象となります。

消費税の特徴として、事業者が提供・販売する商品やサービスの価格に含まれることで転嫁され、最終的な商品の消費やサービスの提供を受ける消費者が負担する税金であり、取引の各段階で8%の税率が設定されています。

 

消費税率の内訳

一般的な認識としての消費税は8%ですが、実は消費税率は国に納める「消費税」と地方自治体に納める「地方消費税」の2つを合算した税であることはあまり知られていません。

2016年6月時点では、国に納められる消費税は6.3%、地方自治体に納められる地方消費税が消費税額の17/63(税率換算で1.7%)と定められ、消費税と地方消費税を合わせた8%が消費税として設定されています。

 

消費税の使いみちとは?

このような特徴を持つ消費税は、どのように使われているのでしょうか。国の財政を管理する財務省が発表した消費税に関する資料から引用して見てみましょう。

今後、少子高齢化により、現役世代が急なスピードで減っていく一方で、高齢者は増えていきます。社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます。

 

(後略)

出典:消費税引き上げの理由:財務省

 

今回の消費税引き上げ再延期までの主なトピック

  • 1989年(平成元年)4月…消費税法成立・施行。導入当初の消費税率は3%
  • 1997年(平成9年)4月…消費税率を3%から5%に引き上げ
  • 2014年(平成26年)4月…消費税率を5%から8%に引き上げ(現行の税制)
  • 2014年(平成26年)11月…消費税率引き上げを延期(2015年10月から2017年4月)
  • 2015年(平成27年)12月…再引き上げに合わせて軽減税率の導入を決定
  • 2016年(平成28年)5月…消費税引き上げを再延期(2017年4月から2019年9月)
 

なぜ消費税引き上げ再延期が決定されたのか

このように社会保障の充実を目的としておこなわれるはずだった消費税率の引き上げですが、引き上げ再延期が決定されました。その理由を引き上げ再延期を発表する安倍首相の記者会見から引用して見てみましょう。

 

(前略)

 

私は、世界経済の将来を決して「悲観」しているわけではありません。

しかし、「リスク」には備えなければならない。今そこにある「リスク」を正しく認識し、「危機」に陥ることを回避するため、しっかりと手を打つべきだと考えます。

今般のG7による合意、共通のリスク認識の下に、日本として構造改革の加速や財政出動など、あらゆる政策を総動員してまいります。そうした中で、内需を腰折れさせかねない消費税率の引上げは延期すべきである。そう判断いたしました。

 

(後略)

出典:平成28年6月1日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 平成28年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ

 

今回の消費税引き上げ再延期が決定された背景として、アベノミクス期待で日本経済が回復しつつあった時期に消費税率を引きあげたことで回復が腰折れしたことが念頭にあると考えられます。

2度の引き上げ延期の判断の根底には、自らの肝いりであるアベノミクスを成功させるための強い意志があることがうかがえます。

 

消費税引き上げ再延期で予想される影響とは

消費税引き上げ再延期で気になるのは、延期にともなって予想される経済や財政への影響です。

引き上げ再延期で期待されるのは景気回復であることは言うまでもありませんが、懸念されるのが増加する一方の社会保障費の財源確保の失敗による財政の悪化です。

 

平成28年度予算案では、総額96兆7千億円のうち31兆9千億円が社会保障費に充てられる予定であり、予算総額のうち実に約33%が社会保障に充てられる計算になります。

今回の消費税引き上げ分は、増収部分の全額が社会保障費に充てられる予定でしたが、引き上げ再延期によって財源確保が大きな問題となります。

少子高齢化が急速に進む昨今、社会保障費の増大とそれに対する財源の手当ては大きな問題であり、引き上げ再延期によってその目処を立てにくくなったことは大きなマイナスと考えられます。

 

消費税引き上げ再延期とFXへの影響

最後に、消費税引き上げ再延期がFXに及ぼす影響について見てみましょう。

予定されていた消費税引き上げでは引き上げ分は全額を社会保障費に充てて基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度までに黒字化する予定でした。

今回の引き上げ再延期ではこの目標達成は堅持したものの、そのための財源確保の目処は立たず、目標達成は危ぶまれています。

 

現状の国債の格付けは最高位のAAA(トリプルエー)から5段階下げた評価であり、日本の財政への国際的な信任は比較的高い状態ですが、財政健全化に失敗すれば国債格付けが引き下げと、それをきっかけとする資産価格に対する悪影響が予想されます。

今回の消費税引き上げ再延期を受けて、格付け会社は国債の格付けは据え置いたものの、主要な格付け会社は軒並み「財政再建に対する信頼性が損なわれた」と格下げに含みを持たせているため、今後の財政健全化の達成には注目する必要がありそうです。

 

おわりに

ここまで見てきたように、2度にわたる消費税引き上げ延期は景気回復を期待しておこなわれたものですが、その影響が好悪どちらに出るかは定かではありません。

特に株式や債券、為替に大きな影響を与える財政健全化目標の達成と国債格付けへの影響は未知数であり、今後の動向に注目したいポイントと言えるでしょう。

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