「中国ショック」が招いた人民元の低迷とFXへの影響

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中国人民銀行(中央銀行)が突然発表した通貨人民元の大幅な切り下げをきっかけとして、世界の金融市場が大混乱におちいった「中国ショック」から1年が経ちました。

その後も断続的な為替介入を繰りかえしていることなどから、人民元相場の動向は世界の外国為替市場に大きく影響しています。

米ドル・ユーロに続く「第3の通貨」を目指す中国人民元の低迷と、外国為替市場への影響を見てみましょう。

事実上の固定相場制である中国人民元と「中国ショック」

外国為替市場で活発に取引されている通貨は主要通貨(メジャーカレンシー)として知られ、特に取引量が大きく信用の大きい米ドルやユーロは基軸通貨として別格の扱いを受けています。

急激な経済規模の拡大に合わせて、中国人民元もメジャーカレンシー入りと米ドルにと並ぶ基軸通貨の地位を占めることを目指していますが、2015年夏の中国ショックによりその目論見は大きく崩れています。

中国人民元の特徴と、中国ショックについて見てみましょう。

独特の相場制度を維持する中国人民元

米ドルやユーロ、日本円などの主要通貨(メジャーカレンシー)は、ほぼ全てが為替レートの安定を放棄して自由な金融政策や金銭の取引を可能とした変動相場制を導入しています。

第二次世界大戦終結からしばらくの間は、各国通貨は米ドルに対する固定相場制(ブレトン・ウッズ体制)を維持していました。

しかし各国の急激な経済成長によりアメリカからの金流出が止まらなくなったことなどから、1971年のニクソン・ショックをきっかけに急速に変動相場制への移行が進みました。

 

主要通貨が変動相場制を導入しているのに対して、中国人民元は現在でも「市場経済を基礎に、通貨バスケットを参考に調整する管理変動相場制」として、事実上の固定相場制を導入しています。

管理変動相場制は完全な変動相場制とは異なり、中国人民銀行が毎朝発表する「基準値」に対してプラスマイナス2%の範囲での値動きしか認められていません。

基準値切り下げによる中国ショックとその意図

基準値が為替レートを左右する中国人民元は、2015年8月11日から13日の3日間で約4.6%の基準値の切り下げをおこない、外国為替市場に大きな混乱をもたらしました。

この基準値の切り下げをきっかけとする一連の混乱を「中国ショック」と呼び、直前のギリシャのユーロ離脱をめぐる国民投票で動揺していた金融市場に更なる混乱に引き起こします。

 

中国人民銀行は一連の引き下げを「基準値の算定方法を変更による影響」と説明しましたが、市場は「中国が景気減速に対処するために輸出に有利な通貨安政策に踏み切った」と受け止めました。

同時期に上海株式市場で個人投資家の信用取引を停止したことで株価も急落、中国市場の動揺は世界の金融市場に波及し、図らずも中国経済の規模の大きさを裏付けることとなりました。

人民元切り下げの思惑とその影響

2015年夏以来、中国人民銀行は引き続き輸出に有利となる人民元安への誘導を崩していません。

しかし前年同期比4.4%減の輸出をはじめ、輸出入に関係するほとんどの経済指標で大きく前年割れを記録するなど、通貨安の効果が出ているとは言いにくい状況です。

 

基本的に通貨安は輸出価格の競争には有利に働くものの、過度な通貨安は経済の先行きへの不安を高めて売りが売りを呼ぶ状況を招きやすく、人民元もまさにこの状況におちいっています。

通貨安や株安、伸び悩む経済指標により海外への資金流出が止まらず、中国人民銀行は為替介入による予想外の人民元安への対処を余儀なくされ、資金流出を警戒して金融機関による資金流出を厳しく規制しはじめています。

 
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基軸通貨の地位を狙う人民元と伸び悩む取引シェア

このように中国人民元が固定相場制の特性を最大限に活用して強引な通貨政策を続ける理由として、人民元を米ドルに対抗する基軸通貨に育てる意図があると言われています。

そのために進められているのが、中国人民元の特別通貨引き出し権(Special Drawing Rights = SDR)入りと、アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank = AIIB)の設立です。

この両方ともに導入直後こそ大きな注目を集めたものの、その後の動きはあまり明るいものではありません。

 

AIIBは発足直後に人事問題でその信用に大きなキズがつき、中国人民元のSDR入りは果たしたものの、2016年10月の正式加入を前に外国為替市場での中国人民元のシェアが大きく伸び悩んでいます。

国際銀行間通信協会(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication = SWIFT)の調べでは中国人民元の取引シェアは1.72%にとどまり、これは米ドル(40.97%)、ユーロ(30.82%)どころか、カナダドル(1.96%)も下回る数値であり、メジャーカレンシーとしての地位も危ういシェアと言えます。

中国人民元への投資はどうなる?

このように報じられているニュースをから見ると、現時点での中国人民元への投資はリスクばかりが大きくリターンが小さい投資と言えます。

しかし見方を変えれば、世界2位の経済規模を持つ国が意図的な通貨安に誘導しているため、将来の値上がり期待を考えるのであれば絶好の投資機会と考えられます。

中国人民元の相場制度は事実上の固定相場制であり、基準値で為替レートが決定されるため、不合理な値動きをする可能性が極めて高いことには注意が必要です。

 
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おわりに

このように度重なる規制や介入にも関わらず、昨年夏の中国ショックをきっかけとする通貨安・株安の影響は拭いきれず、中国経済の先行きに暗い影を落としています。

中国経済の動向は経済だけではなく東アジア情勢にも大きく影響するため、その動向にはより一層の注意が必要と言えそうです。

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