中国株式と人民元の急落は中国経済にどのような影響を与えるか

中国市場_急落_アイキャッチ

 

仕事始めとなる4日の東京証券取引所の株価は、隣国の中国株式の急落と、2度に渡る「サーキットブレーカー」の発動を受けて大きく下落し、前年終値と比べると582円安い1万8450円98銭で取引を終えました。

なぜここまで大きな影響が出たのでしょうか。今回は他の主要国に比べると独特な仕組みである中国の株式市場と、今後の見通しについて見てみましょう。

 

独特な中国株式市場の構造

他の主要国の株式市場と比べて中国の株式市場は、自国通貨である人民元の国際為替市場での価値を維持するために、複雑な仕組みとなっています。

 

中国の株式市場は外国人投資家が取引の主体となる「香港(ホンコン)市場」と、中国人投資家が取引の中心となる「本土市場」に分けられ、本土市場も更に「上海(シャンハイ)市場」と「深セン(シンセン)市場」の2つに分かれています。さらに本土市場の上海市場と深セン市場は、原則として外国人投資家が取引できない「A株」と、外国人投資家向けに解放されている「B株」に分けられます。一定の条件を満たして当局の審査に合格すれば外国人投資家もA株の取引はできるものの、不可能ではないものの極めて難しいと言えるでしょう。

それぞれの株式市場で上場している企業は重複していないため、中国企業に投資するときに注意しなければならないポイントの1つです。

 

かつてはA株とB株のどちらかにしか上場していない企業がほとんどだったため、このような複雑な仕組みでも不具合は限られたものでした。

しかし現在では、A株とB株に重複して上場している企業が増えていることや、中国が国際金融市場に参加するためにこのような変則的な取引市場を維持していることに対する否定的な意見の強まりなどから、将来的なA株とB株の統合が議論されています。

 

導入されたサーキットブレーカーとはなにか

国際金融市場に参加するために、それまでの原始的な金融市場から大きな変革を成し遂げようとしている中国の株式市場ですが、2015年夏の株価急落を受けて導入された仕組みの1つに、「サーキットブレーカー」があります。

他の主要国の株式市場で導入されているサーキットブレーカーは、各種有価証券・商品・指数などについて、未来の売買についてある価格での取引を保証する「先物取引」で価格が急変した場合に、相場の安定化のために発動する措置のことを言います。

 

中国で導入されたサーキットブレーカーはこれとは異なり、上海、深センの両市場に上場する有力300銘柄で構成する「CSI300指数」の変動幅が、前営業日終値比で5%上下した場合に15分間、7%上下した場合はその日の取引を停止する仕組みです。

取引停止の対象となるのは先物取引だけではなく株式やファンド、CB(Convertible Bond = 転換社債)など、市場で取引されている全ての金融商品を対象としているため、より広範囲に影響を及ぼす仕組みとなっています。

 

今後の中国経済と株式・為替はどうなるのか

このように他の主要国と比べても広範囲に影響を及ぼす仕組みを導入した中国のサーキットブレーカーですが、導入初日である4日に早速発動されましたが、この株価急落は4日に発表された中国PMI(Purchasing Managers Index = 購買担当者指数)が10ヶ月連続で下落し、節目となる50を下回ったことが大きな原因と見られています。

昨年夏の株価急落以降、先行きに明るいものが見えない中国経済ですが、その先行きはどうなると言われているのでしょうか。

 

直近の最も大きなリスクとして市場関係者に指摘されているのが、株価対策として昨年夏に中国当局が国有企業などに対して指示した「保有株式の半年間の売却禁止」が、今月に期限を迎えることです。

これにより多くの株式を保有する国有企業が既に大きく目減りしている株式の評価損を埋め合わせるため、保有する株式をまとめて売却するとの予測もあり、更なる株価下落の可能性も指摘されています。

国有企業による保有株式の大量売却の他にも、昨年夏の株価急落をきっかけとして表面化した弱い経済指標や、基軸通貨に向けて着々と歩みを進めながらも止まらない人民元安の加速など、大小様々なリスク要因があると言われています。

 

1970年代末に行われた「改革開放」によって計画経済から市場経済への移行を果たし、バブル経済崩壊後の長期低迷に悩む日本を抜いて世界第2位の経済大国となった中国ですが、ここに至るまで明確に「恐慌」と認識される経済危機には巻き込まれていません。2007年夏のリーマン・ショックを切っ掛けとする世界金融危機も、他の主要国に比べて少ないダメージで乗り切りました。

しかしそのために積み上げてきた様々な無理がここに至って表面化しているため、これから先も今までのように安定して高い経済成長を維持できるかはかなり疑わしいと言わざるを得ません。

既に昨年夏の株価急落をきっかけに、人民元は他の通貨に対して弱い状況が続きいています。特に対ドルでは4年半ぶりの安値を記録するなど、市場参加者は中国経済の先行きに対して、あまり明るい見通しを持っていないと言えそうです。

 

おわりに

ここまで見てきたように、中国の株式市場は通貨の価値を高く保つために独特の仕組みを導入しているため、金融市場としての公平性や透明性はそれほど高くなく、成熟した金融市場とは言いづらい面が多分にあります。

更にこれまでの経済成長の負の部分が昨年夏の株価急落をきっかけに一度に表面化しているため、中国は国際社会の参加に伴う市場改革と、経済成長の負の部分の解消という2つの課題を解消する必要に迫られています。

他の主要国に比べても高い経済成長は投資対象として大きな魅力ですが、中国に投資をするときにはこれらのリスクについて検討する必要があると言えるでしょう。

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