続くブレグジットの影響とイングランド銀行の金融政策

ブレグジットの影響とBOEの金融政策_アイキャッチ

イギリスのEU離脱(ブレグジット)を受けて懸念される景気後退に対するため、イングランド銀行(Bank of England = BOE)は大規模な金融政策の導入を決定しました。

今回の決定によって、どのような影響が考えられるのでしょうか。決定された金融政策の内容と、その影響について見てみましょう。

今回決定されたイングランド銀行の金融政策

最初に、今回決定された金融政策の内容を見てみると、目玉となるのは政策金利の引き下げと国債買い入れ枠の拡大の2つです。

合わせて最大1,000億ポンド(約13兆円)の銀行向け資金供給スキーム(TFS)の導入も決定されました。

これらの政策は中央銀行の当座預金残高量を拡大する、事実上の量的金融緩和(QE)の復活と言えます。

政策金利の引下げ

政策金利の引き下げについて見てみると、25ベーシスポイント(bp)の引き下げをおこない、過去最低の0.25%となりました。

今回の引き下げはリーマン・ショック直後の2009年以来7年ぶりの利下げであり、年内には政策金利を「ゼロを若干上回る水準まで」再度引き下げる可能性を想定していることも明らかにされています。

国債買い入れの拡大

政策金利の引き下げと合わせて決定されたのが、国債買い入れの拡大です。

国債買い入れ金額は従来の買い入れ金額である3,750億ポンド(約50兆円)から600億ポンド(約8兆円)拡大した4,350億ポンド(約58.1兆円)となり、2016年8月から6カ月にわたって実施するとしています。

買い入れ対象となるのは満期までの残り期間(残存期間)が異なる、

  • 3年から7年
  • 7年から15年
  • 15年以上

の3セクターの国債が対象です。

今回の国債買い入れでは、入札規模は8月10月末までは各セクターにつき11億7000万ポンド(1,561億円)とされていますが、今後の市場状況に合わせて随時見直しをおこなうとしています。

国債買い入れと合わせて、投資適格級の社債も100億ポンド(約1.3兆円)の買い入れが決定されました。

社債の買い入れは18カ月かけておこなわれ、イギリス経済に大きく貢献していると認められた企業が発行する債券が買い入れ対象となります。

今回の政策が目指すものとは

このように事実上の量的緩和(QE)の復活となった今回の政策決定は、何を目的としているのでしょうか。

マーク・カーニーBOE総裁の記者会見要点を見てみましょう。

景気刺激策(金融刺激策)は明確な根拠と衝撃緩和が狙い

「経済指標の多くで、ブレグジットの兆候が確認されているため、必要なときに効果が表れるよう、今すぐ刺激策を打ち出す明確な根拠が存在する」として、「刺激策は衝撃を緩衝とともに、調整を下支えして不透明性を払しょくすることが狙い」の金融政策と説明しています。

イギリスのEU離脱(ブレグジット)による影響

「新たな関係をめぐるヨーロッパ諸国との交渉とイギリスの生産性をめぐる包括的な計画の策定が政府にとり最重要事項であり、長期的な繁栄を決定する要因」となるため、「金融政策は一段と機動的であり、衝撃に対応する最初の手段として適切」としています。

マイナス金利とヘリコプターマネーは検討事項ではない

今回の決定では国債買い入れ枠の拡大と政策金利の引き下げを決定しましたが、更なる対策として「マイナス金利とヘリコプターマネーの導入は支持していないし、利点があると思えない」としています。

その理由として、「多様な手段を有していて、きょう発表したすべての措置にはなお余地があり、必要に応じてわれわれが実施できる手段は他にもある」ためとしています。

国内経済の維持を目的とした今回の決定

注意したい点としては、今回の内容は「外国為替相場を標的としたものではなく、国内経済の支援を目的」としたものであることです。

会見でカーニーBOE総裁はイギリスのEU離脱(ブレグジット)をめぐる国民投票の結果により経済見通しが著しく悪化したため、「異例の」包括的刺激策を打ち出したことを強調しました。

これに合わせて、「イギリスが新たな現実に適応してEU域外で新たな好機獲得に向けて前進していくため、金融安定目標の達成に必要なあらゆる行動を取る用意が整っている」ことも言明されました。

ブレグジットと今回の決定が与える影響とは

このように大規模な量的金融緩和の実施を決定したことは、ブレグジットを決めたイギリス経済にどのような影響を与えると考えられているのか、その予想を見てみましょう。

今後の経済成長の見通し

最初に、今後3年間の経済成長の予想数値を見てみましょう。

2016年の経済成長率見通しは、ブレグジットの影響により下半期は低調さが予想されるものの、上半期の成長が好調だったことから、従来予想の2.0%に据え置きとなりました。

2017年については従来の2.3%から大幅に下方修正した0.8%成長として、18年見通しも1.8%に引き下げとしています。

今後のインフレ率の予想

経済成長率と合わせて発表されたインフレ予想も大幅修正され、2018年と2019年のインフレ率が2.4%に上昇する予想が発表されました。

この大幅修正の背景には、短期的にインフレ率を目標の2.0%に向けて低下させることに伴うコストが効果を上回るためとされています。

 
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おわりに

このように、ブレグジットはイギリス経済に大きな影響を与えることが予想されるため、BOEは早め早めの対策をおこなっています。

この方針をイギリス・ハモンド財務相は「英国で新たな章がはじまり、今後の課題に取り組む中で、(カーニー総裁は)経済支援に必要な手段を有している」と評価して、足並みが一致していることを示しています。

今後のブレグジットに関する実務者交渉と合わせて、イギリスからはますます目が離せないと言えそうです。

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