「2%の物価目標の達成」が遠い。2018年7月の金融政策決定会合の内容は

「2%の物価目標の達成」が遠い。2018年7月の金融政策決定会合の内容は

日本銀行(日銀)は2018年7月30日・31日に開催した金融政策決定会合で、従来の金融緩和を維持しつつも「金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする」と若干の軌道修正を図りました。

2%の物価目標の達成のために過去に例のない金融緩和を続けている黒田日銀ですが、これまでどのような金融緩和を実施してきたのかと合わせて、今回の決定の内容とその影響を見てみましょう。

アベノミクスと歩調をあわせた「異次元緩和」の振り返り

黒田バズーカとも呼ばれた2013年4月の「量的・質的金融緩和」

前任の白川方明(しらかわ・まさあき)総裁の後を継いで日銀総裁に就任した黒田東彦(くろだ・はるひこ)総裁は、就任早々に安倍政権の進める金融政策「アベノミクス」と歩調を合わせた金融政策の導入を明言。「量的・質的金融緩和」として大々的に発表しました。

量的・質的金融緩和のポイントとなったのは、金融市場調節の操作目標をマネタリーベースに切り替えた上で、60兆円~70兆円の買い入れを進める「マネタリーベース・コントロールの採用」と金利低下をうながすための年間50兆円規模の「長期国債の買い入れ拡大と年限長期化」、資産価格への働きかけを狙った「上場投資信託(ETF)・不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ拡大」の3つです。

サプライズ?2014年10月の「量的・質的金融緩和(追加緩和)」

量的・質的金融緩和の導入から1年強が経過した2014年10月、内容を上積みする形でのさらなる金融緩和の導入が図られました。

マネタリーベースの増加ペースを約10~20兆円上積みして、年間80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節をする「マネタリーベース増加額の拡大」と、長期国債の保有残高を約30兆円上積みした年間約80兆円に相当するペースでの買い入れと、平均残存期間を3年ほど延長して7年~10年程度とすることを決定しました。

さらに、ETFおよびJ-REITについて、保有残高がそれぞれ3倍増となる年間約3兆円・年間約900億円の買い入れと、購入対象にJPX日経400連動ETFを加える「資産買入れ額の拡大および長期国債買入れの平均残存年限の長期化」が発表されました。

2016年1月の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」

2015年12月には「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置として国債の残存期間を10年から12年程度とすることや、資産の買い入れ対象にコマーシャルペーパー(CP)や社債を加えるなどの措置が導入されました。しかしその影響は小さく、次に注目を集めたのが2016年1月の「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入です。

マイナス金利付き量的・質的金融緩和では、これまでの金融緩和に対して、金融機関が保有する日本銀行の当座預金(マイナス金利導入時点で残高260兆円)の政策金利残高(導入時点で約10兆円)に対して0.1%のマイナス金利を適用する「マイナス金利政策」の導入により、日銀の金融政策の発表としては久しぶりに注目を集めました。

2016年9月の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」

マイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入後、さらなる金融緩和の手段として導入されたのが「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」です。

これは、短期金利と長期金利にそれぞれ目標金利を設定する「イールドカーブ・コントロール」と、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」からなります。

当初2年程度を目標としていた2%の物価目標の達成時期を明示しなくなったことや実施する内容が複雑化したことから、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は否定的な報道が多くを占めることとなりました。

2018年7月の金融政策決定会合の内容は

マイナス金利は維持。長期金利は0%以上を容認

日銀は30日・31日の金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)政策における長期金利の誘導目標はこれまで通り「ゼロ%程度」を維持した一方、「金利は経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする」と明記。長期金利の上振れ余地を持たせました。

上場投資信託(ETF)買い入れの見直し

また、資産買い入れとして購入している上場投資信託(ETF)は、買い入れペースを年間約6兆円と据え置いたものの、「市場の状況に応じて、買い入れ額は上下に変動しうるものとする」としました。

同時にETF買い入れ額の内訳を見直し、これまで2.7兆円程度だった東証株価指数(TOPIX)連動のETF買い入れ額を4.2兆円と大幅に引き上げました。

今回の決定は「出口政策」につながるのか?

今回の決定は、従来の強力な金融緩和を継続する内容であり、一部報道であったような「出口政策」とは性格の全く異なるものです。しかし、細かい文言や資産買い入れの内訳など、手詰まり感が強かった金融政策に余裕を持たせることを狙った細かい見直しがおこなわれています。

今後、マイナス金利やイールドカーブ・コントロールを超える、インパクトのある金融緩和が導入される可能性は小さいものの、今回の余裕を活用した政策が導入される可能性は否定できません。

おわりに

2013年4月の量的・質的金融緩和の導入からすでに5年が経過して、アベノミクスの第一の矢とも言われた「大胆な金融政策」の手詰まり感はぬぐえません。

今回の見直しは2%の物価目標の達成を目指すための苦渋の一手とも取れ、今後どのような金融政策を取るかは、要注目と言えそうです。

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