イギリスの「ハード・ブレグジット」とFX・外国為替への影響

イギリスの「ハード・ブレグジット」とFX・外国為替への影響

イギリス・メイ首相は2017年1月17日に欧州連合(EU)離脱の交渉方針に関する演説をおこない、EU離脱とあわせてヨーロッパの単一市場からも脱退(ハード・ブレグジット)を取る方針を明らかにしました。

国民投票の結果に続き、国際社会にとってサプライズとなった今回の演説の内容は、イギリスとEUの今後の関係にどう影響するのでしょうか。

今回の演説のポイントとなる要素と、その影響を見てみましょう。

EU単一市場からの離脱表明と演説のポイント

はじめに、日本経済新聞の報じたイギリス・メイ首相の演説要旨から引用して、今後の離脱交渉のポイントとなると思われる部分をピックアップしてみましょう。

イギリス法の独立と対テロ・犯罪でのEUとの連携

法の支配を取り戻し、EU司法裁判所のイギリスでの裁判権を終わらせることで、「EU離脱で我々の法律がウエストミンスター、エディンバラ、カーディフ、ベルファストで作られるようになる」と発言。

ただし、犯罪やテロに対しては引き続きEUと協力する方針を打ち出し、司法や情報共有といった分野で具体的な協定を結ぶことを呼びかけました。

地域連携の強化

EU離脱の交渉開始にあたって、開かれた通商国家として成功するためにイギリスを構成する3地域の貴重な連携を強化、未来に向けて手を携える必要があると訴えました。これは自治議会選を控える北アイルランドも例外ではないとしています。

移民流入の管理と往来自由の維持

ブレグジットの大きな動機となった移民流入の管理は、「国益に沿った移民管理に基づいて適切におこなう」として、EUからの移民流入の制限する方針を明確にしました。

地続きの国境を有するEU加盟国であるアイルランドとは、往来自由を維持することは離脱交渉の優先事項としています。

市民・労働者の権利保障

公正な国家であるイギリスとして、イギリスに済むEU市民とEUに住むイギリス国民の権利の保障と、労働者の権利を擁護し高める必要を訴え、EUの法律に縛られない独自の立法を進める方針を打ち出しています。

ヨーロッパ・ヨーロッパ以外の国との自由貿易協定

離脱の方針を打ち出したものの、EUとの間にはモノやサービスの移動が最大限自由な貿易協定の締結を目指すとしています。

同時に中国や湾岸諸国、イギリス連邦加盟国・地域(コモンウェルス)に代表されるヨーロッパ以外の国との自由貿易を進める方針を明らかにしています。

「円滑で秩序だった」EU離脱の推進

「現在の関係から新たなパートナーシップに移行する中、ビジネスや安定の脅威になることがあってはならない」として、条約で定められた2年間の離脱交渉期間で新たなイギリスとEUの関係を定めると表明。

あわせて、現制度から新制度への移行は、段階的におこなうことがイギリス・EUの双方にとって望ましいとしています。

ハード・ブレグジットに至った背景とは?

今回の演説により、イギリスは事前の予想をくつがえして現在の準加盟国や域外国のような立ち位置ではなく、完全な離脱(ハード・ブレグジット)の方針を取ることを明らかにしました。今回の決定の背景には、どのような原因があったのでしょうか。

現在、ヨーロッパ各国で大きな問題となっているのは2011年の「アラブの春」をきっかけとする中東情勢の混乱とヨーロッパ圏への難民流入です。

直近では100万人とも言われるシリア難民により、南ヨーロッパ・東ヨーロッパをはじめとするEU加盟国は治安や経済情勢の悪化など、様々な影響を受けています。

特に治安情勢の悪化は大きな問題であり、ドイツ・フランスでのテロの頻発、主な難民の受け入れ先である南ヨーロッパ・東ヨーロッパでの相次ぐ暴動など、急激な難民流入はEUにとって無視できないリスクとなっています。

ハード・ブレグジットの決定の背景には、演説の中で何度も触れられていることからも難民への対応が大きな部分を占め、完全な離脱を掲げながら司法や情報共有などでは従来の結び付きの維持を求めるなど、対応に苦心している様子が垣間見えます。

交渉の結果によっては、イギリス・EU双方にマイナスの結果になる可能性も、決して小さいものではありません。

ハード・ブレグジットの方針表明と為替への影響

メイ首相の演説を受けて、トレーダーの判断は大きく割れています。

外国為替市場は演説と前後して、英ポンド/米ドル(GBP/USD)が急激にポンド高・ドル安に動き、米ドル/日本円(USD/JPY)もリスク回避の円高・ドル安の傾向を加速させるなど、円の動向にも大きく影響しています。

今回の演説によってトレーダーの投資判断の手掛かりはできましたが、交渉の期間や結果によっては、今後も急激な値動きの原因となる可能性は小さくありません。

おわりに

今後2年間の交渉がいつまで続き、どのように決着するかは現時点では全く不明ですが、その内容は時期も含めて折に触れて注目されるトピックの1つです。

その成否や内容は、今後も要注目と言えるでしょう。

参考サイト

このコラムに関連する記事

チェックリスト: 0 件
開く
全クリア
TOP