日本銀行(日銀)が結んだ「為替スワップ協定」の役割とは

日本銀行(日銀)が結んだ「為替スワップ協定」とその内容

2018年10月26日、日本銀行(日銀)は中国の中央銀行である中国人民銀行との間で為替スワップ(通貨スワップ)協定を締結したことを発表しました。

今回の協定締結にはさまざまな意見がありますが、そもそも通貨スワップ協定にはどのような役割があり、日本はどのような国と地域との間で通貨スワップ協定を結んでいるのでしょうか。

今回は、通貨スワップ協定が目指すものと、日本が結んでいる通貨スワップ協定の現状を大まかに見てみましょう。

緊急時に国や地域が外貨を融通しあう「通貨スワップ」

金融危機や通貨危機に備えた仕組み

一般的に通貨スワップ協定は、国や地域が互いの外貨準備を活用して、主に米ドルなどの外貨を融通し合う取り決めです。各国政府や中央銀行が金融危機や通貨危機に直面したときに市場(マーケット)の安定に必要な資金を融通し合うことで、一国では対処できない危機に対応する仕組みとして活用されています。

メジャーカレンシーを発行する国とは無期限・無制限の協定

金融システムの流動性を保護する仕組みとしての通貨スワップ協定は、アメリカ・欧州連合(EU)・イギリス・スイス・カナダの5つの国と地域と無期限・無制限の協定を結び、金融危機時の流動性を保障することで国際金融システムの安全性を提供しています。

東アジア地域ではチェンマイ・イニシアチブが基本

二国間や多国間協定が基本となる通貨スワップ協定ですが、東アジア地域では、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓の間で2000年に合意した「チェンマイ・イニシアチブ」がベースとなっています。

多国間協定のチェンマイ・イニシアチブでは、域内のある国が対外支払いに支障をきたすような流動性の困難に直面したときに、他の国が外貨資金の短期的な融通をする集団的な金融支援体制として構築され、為替相場の急激な変動を抑制して為替・金融市場の安定を確保することを目的としています。

2009年には多国間協定へと拡大

2009年には、より発展した枠組みとして「チェンマイ・イニシアチブのマルチ化」も合意され、翌2010年に発効しました。この発効により通貨スワップ発動に必要な手続きが共通化され、危機時にメンバー国の外貨準備を多国間でより迅速・円滑に融通し合うことができるようになりました。

また、従来のチェンマイ・イニシアチブの通貨スワップ取引ネットワークに未参加だったブルネイ、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの5カ国も新たに加わったことで、ASEAN+3の全13カ国が参加する、広域ネットワークとして生まれかわっています。

2014年に再度改訂が加えられ、引き出し可能総額が倍増されるとともに、引き出し可能上限額に対して、国際通貨基金(IMF)プログラムなしで発動可能な割合(IMFデリンク割合)が20%から30%に引き上げられたほか、新たに危機予防機能が導入されるなどの見直しがおこなわれています。

従来の通貨スワップとは性格の異なる今回の協定

金融システムの安定ではなく経済・金融活動をサポートする内容

本来は金融システムの安定を目的として結ばれる通貨スワップ協定ですが、今回締結された日中通貨スワップ協定はこれとは異なる目的のために結ばれました。最大の違いは、今回の通貨スワップ協定が日中両国の信用と秩序を維持して、経済発展のための経済・金融活動をサポートする協定であることが強く打ちだされていることです。

中国本土に進出した邦銀保護が主目的

今回の協定で同意した引き出し限度額は、日本銀行側が2,000億人民元、中国人民銀行側が3.4兆円となり、中国に進出した日本の銀行が、人民元での資金決済に不測の事態が生じて日本の金融システムに影響することが懸念されるときに、人民元の流動性供給をおこなうことを目的としています。

つまり、外国為替市場で中国人民元が弱くなったときに支える協定ではなく、邦銀の保護を主眼として結ばれたのが今回の協定なのです。

おわりに

一口に通貨スワップ協定といっても、その性格はさまざま。今回日中間で結ばれた協定はこれまでの金融システムの安定を目的とするものではなく、日本企業の保護を主目的としています。

従来の通貨スワップ協定と違う今回の協定は、ハイリスク・ハイリターンな中国人民元(CHF)への投資のリスク回避に一定の効果が期待できます。

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