本当にある?「有事の円買い」の背景を徹底解剖

本当にある?いざというときの「有事の円買い」の背景を徹底解剖

就任から4カ月がたち、中東・シリアへの軍事介入の表面化や北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への圧力など、トランプ大統領の強硬な外交姿勢が明らかになりつつあります。

国際情勢が緊迫すると外国為替市場で話題になるのが、「安全資産」として日本円が買われる「有事の円買い」ですが、実際に市場で起きているのでしょうか。

「有事の円買い」とはなにか

いわゆる「有事の円買い」と呼ばれる現象は、戦争や紛争が発生したときに外国為替市場で「安全資産」の一つと見られている日本円が買われる現象です。

安全資産としての「有事の円買い」は本当にある?

一般的に「有事の円買い」の背景には、通貨としての日本円が「安全資産」であることが大きな原因とされています。確かに国際情勢が緊迫して不安心理が高まれば日本円が買われるため、一見すると日本円は「安全資産」にも見えますが、その背景にはどのようなものがあるのでしょうか。

情勢が安定しているときに人気の通貨は、値動きが激しく高金利の通貨であり、値動きが安定しているものの低金利の日本円は「売られる」通貨の代表格です。

平常時は「円を売って高金利通貨を買う」取引が基本戦略ですが、情勢が緊迫すると取引を続けるリスクが大きくなり、取引の手じまいやリスク回避の運用のために「高金利通貨を売って円を買う」取引が活発になります。

「有事の円買い」の原因には何がある?

表面的には「有事の円買い」と言える円買い圧力ですが、その背景には「対外純資産の大きさ」と「安定している短期国債」という二つの要因があります。

日本が海外に持つ資産を表す「対外純資産」

対外純資産とは、企業や個人など、日本経済が海外に保有する資産から負債を除いた純粋な資産とみなせる資産のことです。対外純資産に含まれるものとしては政府の外貨準備や銀行の対外融資残高,企業の直接投資残高などがあります。

対外純資産はほぼ経常収支の黒字に等しいため、1980年代から経常収支の大幅黒字が続いた日本は世界有数の対外純資産を持つようになりました。この大きな海外資産が国内に戻るときの影響は大きく、有事の円買いの背景の一つと言われています。

資産の避難先として有望な日本国債を買う

有事の円買いにより流入した資産が向かう先は、そのほとんどが短期国債であることが知られています。利回りはゼロに等しく、運用対象としては魅力に乏しいと言われる日本国債に資金が集中するのはなぜでしょうか。

一般的に国債を含む債券は、利回りが良いほど値動きが激しくなることが知られています。利回りがほぼゼロに等しい短期国債は「持っていても利益が出ないものの、損失が出ることもない」金融商品です。加えて日本国債はS&Pの格付けでA+(安定的)と信用力が高く、流動性の高さも一時的な避難先としては魅力です。

このように資産の一時的な避難先として魅力がある短期国債ですが、購入は日本円に限られます。そのため、「一時的な避難先である短期国債を買うために、まず円が買う」動きが有事の円買い圧力につながっているのです。

おわりに

このように「情勢が緊迫したときの円買い圧力」を有事の円買いとして扱うかは、実は微妙な問題と言えます。

微妙な解釈の違いが実際の取引に影響することはほとんどありませんが、外国為替市場で起きる出来事の仕組みの背景を誤って理解していると、思わぬタイミングで足をすくわれる可能性があります。

安定した取引を続けるためにも、投資家の常識とされている現象の仕組みを見直してみることも必要なのかもしれません。

参考サイト

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