現代の為替制度の基礎となった為替制度「固定相場制度」の特徴

固定相場制_アイキャッチ

主要国で変動為替相場制を導入している現在、固定相場制度は過去の為替制度としてあつかわれていますが、固定相場制度は現在の外国為替市場の基礎となった為替制度であり、その成り立ちや仕組みを知っておくことは重要です。

今回は固定相場制度の歴史と、主要な仕組みを見てみましょう。

為替レートを固定による安定を目指した「固定相場制度」の歴史

固定相場制度は、各国政府の間の取り決めに基づいて、為替レートを固定・維持する為替制度の総称であり、その元となった取り決めとして、1944年に成立した「ブレトン・ウッズ体制」があげられます。

ブレトン・ウッズ体制は1929年の世界大恐慌が1930年代に各国がブロック経済圏の導入と世界大戦を引き起こした反省と、世界経済の安定化を目的に導入された取り決めです。

この取り決めは会議が開催された街の名前から「ブレトン・ウッズ体制」と名付けられ、米ドルを基軸通貨とする現在の外国為替市場のはじまりとなります。

ブレトン・ウッズ体制の具体的な施策として、為替相場の安定を目指して国際通貨基金(International Monetary Fund = IMF)、国際復興開発銀行(International Bank for Reconstruction and Development = IBRD)の設立や、固定相場制度の導入があげられます。

しかし世界各国の経済規模が極端に大きくなったことで固定相場制度を裏付ける金の産出量や保有量を対応させることが難しくなり、1973年にドルと金の交換を停止した「ニクソン・ショック」により、主要国は変動為替相場制に移行していきました。

 
あわせて読みたい

fx_akarichan 現在の外国為替市場の主流となった「変動為替相場制」の特徴
 

固定相場制度のメリット・デメリット

現在はごく一部の新興国に限られている固定相場制度ですが、どのようなメリット・デメリットがあるのかを見てみましょう。

固定相場制度のメリット…輸出競争に有利

固定相場制のメリットとしてもっとも大きいのは、為替レートの管理が容易なため、特に途上国の産業を安定成長させやすい点です。

固定相場制度により安定した為替レートの維持が期待できる固定相場制度の下では、どの国に対しても同じ製品を同じ価格で販売することができるため、輸出産業を育成している新興国や輸出が経済の基盤となる国では、為替レートの管理が容易な固定相場制が好まれます。

固定相場制度のデメリット…国際金融のトリレンマ

輸出のときの価格競争に有利になるというメリットがある固定相場制度ですが、「国際金融のトリレンマ」に捕われるというデメリットが生じます。

国際金融のトリレンマとは、アメリカの経済学者ロバート・マンデルが提唱した金融仮説の1つで、「自由な資本移動」と「為替相場の安定(固定相場制度)」、「独立した金融政策」のうち、同時に2つまでしか実現できないとする仮説です。

主要国ではこの3つのうち、よりメリットの大きい自由な資本移動と独立した金融政策を実現するために、固定相場制度をあきらめて変動為替相場制を採用しています。

知っておきたい3つの固定相場制度の仕組みと特徴

一口に固定相場制度と言っても、その管理方法により「ドルペッグ制」と「通貨バスケット制」、「カレンシーボード制」の3つに分けられます。それぞれの内容を見てみましょう。

自国通貨を米ドルと連動させる「ドルペッグ制」

ドルペッグ制とは、自国の貨幣レートを他国通貨と連動させるペッグ制(固定相場制度)のうち、米ドルへのペッグ制を採用している固定相場制度のことです。

経済基盤の弱い国や政情が不安定な新興国などでは、自国の通貨価値が不安定であり、大きく変動しがちです。

不安定な通貨は正常な経済運営や海外投資の誘導を阻害するだけでなく、取引相手国にも無用のリスクを負わせることにつながり、ますます投資を呼びにくくするという悪循環を招きかねません。

こうした通貨リスクを軽くするために、自国の通貨レートを米ドルと連動させて為替レートと通貨価値の安定を図るのが、ドルペッグ制の特徴です。

ドルペッグ制には為替レートと通貨価値が安定するメリットがありますが、独自の金融政策を導入することが難しく、国内物価の調整が難しいというデメリットを含んでいます。

ドルペッグ制を採用している国と通貨は、香港・香港ドル(一定範囲内での変動)、エルサルバドル・コロン、パラナ・バルボア(硬貨のみ)、クウェートを除く中東の産油国などが知られています。

複雑な計算に基づいて複数の外貨と連動する「通貨バスケット制」

通貨バスケット制は自国通貨を複数の外貨と連動した為替レートに設定する仕組みであり、採用国が極めて限られる固定相場制度です。

通貨バスケット制は「重み付け」により外国為替市場の変動の影響を小さくできるメリットがあるものの、為替レートを求める計算の「複雑さ」やどのように為替レートを決定しているかの「不透明さ」などのデメリットも指摘されています。

現時点で通貨バスケット制を採用している主な国は、シンガポール、ロシア、マレーシア、中国(2010年6月21日より米ドルは解除)などがあります。

中央銀行が為替レートを保証する「カレンシーボード制」

カレンシーボード制とは、自国通貨と特定の外貨(主に米ドル)を一定の為替レートで交換することを保証し、国内に流通する自国通貨に相当する米ドルを中央銀行が保有する固定相場制度です。

カレンシーボード制では中央銀行は国内で流通する自国通貨に対応するドルを保有することが義務付けられ、流通する通貨は中央銀行の保有する米ドルに100%バックアップされることで、固定相場制度に対して信頼が得られます。

中央銀行の保有する米ドルの総量に通貨の発行量が左右されるカレンシーボード制ではインフレの事前防止が期待できます。しかしペッグ制と同様に、裏付けとなる外貨発行国の金融政策に自国の金融政策が左右されるデメリットが考えられます。

おわりに

固定相場制度を採用している国は急速に減少していますが、現在でも固定相場制を維持している国は、中国やロシアなどの一部の主要国も含めていくつかありますが、これらの国が変動相場制に移行するときには大きな影響が考えられます。

今後も固定相場制度を維持するかは、注意してみたいポイントと言えるでしょう。

このコラムに関連する記事

TOP