現代の為替制度につながる「固定相場制」の仕組みとは

現代の為替制度につながる「固定相場制」の仕組みとは

外国為替市場に参加している国の多くは変動相場制を導入している現在、固定相場制は少数派になりつつあると言えます。

しかし固定相場制は現在の外国為替市場を形づくった為替制度であり、その成り立ちや仕組みを知ることは重要です。今回は固定相場制の歴史とその仕組み、現在でも利用されている仕組みを見てみましょう。

安定した為替レートを目指した「固定相場制」の概略

固定相場制は各国政府の取り決めに基づいて為替レートを維持・固定する為替制度であり、国家間貿易が活発になった第2次世界大戦後に本格導入されました。

固定相場制の基本となる取り決めとなったのが、1944年(昭和19年)にアメリカ・ニューハンプシャー州のブレトン・ウッズで開催された連合国国際通貨金融会議で成立した「ブレトン・ウッズ協定」です。

ブレトン・ウッズ協定は自由貿易の発展による世界経済の安定化を目指した協定であり、戦後の国際貿易の基本となる枠組みを決定しました。ブレトン・ウッズ協定にもとづいて国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立や、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)の締結などが進められ、その一環として導入されたのが、「金本位制」の導入と、米ドルを中心とした固定相場制です。

導入当初は問題なかった固定相場制ですが、1973年(昭和48年)に金本位制の停止(ニクソン・ショック)が発生、各国はよりゆるやかな固定相場制である「スミソニアン体制」を経て、本格的に変動相場制へと移行していきました。

あわせて読みたい

現在の外国為替市場の主流となった「変動為替相場制」の特徴

固定相場制のメリット・デメリット

現在の導入国は限定されている固定相場制ですが、変動相場制と比べるとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

固定相場制のメリット…輸出競争に有利

固定相場制のメリットとしてもっとも大きいのは、為替レートの管理が容易であり、途上国の産業を安定成長させるのが容易になる点です。

安定した為替レートの維持が期待できる固定相場制では、どの国に対しても製品を同じ価格で販売できます。そのため、輸出産業を育成している新興国や輸出が経済基盤となる国では、為替レートの管理が容易な固定相場制が変動相場制に比べると有利です。

固定相場制のデメリット…国際金融のトリレンマ

輸出の価格競争で有利になる固定相場制は、「国際金融のトリレンマ」に捕らわれるというデメリットが生じます。

国際金融のトリレンマとは、安定した金融政策を実現する「自由な資本移動」と「為替相場の安定(固定相場制)」、「独立した金融政策」三つの要素のうち、同時に二つまでしか実現できないとする仮説です。

主要国はよりメリットの大きい自由な資本移動と独立した金融政策の実現のため変動為替相場制を採用していますが、新興国や輸出が経済基盤の国では為替相場の安定を狙って固定相場制を維持しています。

知っておきたい。三つの固定相場制の仕組みと特徴

一口に固定相場制と言っても、その管理方法により「ドルペッグ制」と「通貨バスケット制」、「カレンシーボード制」の三つに分けられます。それぞれの内容を見てみましょう。

自国通貨の為替レートを米ドルと連動させる「ドルペッグ制」

ドルペッグ制とは、自国の貨幣レートを他国通貨と連動させるペッグ制(固定相場制)のうち、米ドルへのペッグ制を採用している固定相場制のことです。

経済基盤の弱い国や政情が不安定な新興国などでは、通貨価値が不安定であり大きく変動しがちです。不安定な通貨は正常な経済運営や海外投資の誘導を阻害してますます投資が呼びにくくなる悪循環を招きます。

こうした通貨リスクを軽くするために、自国の通貨レートを米ドルと連動させて為替レートと通貨価値の安定を図るのがドルペッグ制です。為替レートと通貨価値が安定するのがメリットですが、独自の金融政策を導入することが難しく、国内物価の調整が難しいというデメリットを含んでいます。

ドルペッグ制を採用している国と通貨は、香港・香港ドル(一定範囲内での変動)、エルサルバドル・コロン、パラナ・バルボア(硬貨のみ)、クウェートを除く中東の産油国などが知られています。

複数の外貨と連動する「通貨バスケット制」

固定相場制のうち、自国通貨を複数の外貨と連動した為替レートに設定する仕組みは「通貨バスケット制」として知られています。

通貨バスケット制は「重み付け」により外国為替市場の影響を小さくできるメリットがありますが、為替レートを求める計算の「複雑さ」やどのように為替レートを決定しているかの「不透明さ」などのデメリットがあります。

通貨バスケット制を採用している主な国には、シンガポール、ロシア、マレーシア、中国(2010年6月21日より米ドルは解除)などがあります。

中央銀行が為替レートを保証する「カレンシーボード制」

カレンシーボード制は、自国通貨と特定の外貨(主に米ドル)を一定の為替レートで交換することを保証し、国内に流通する自国通貨に相当する米ドルを中央銀行が保有する固定相場制です。

中央銀行は国内で流通する自国通貨に対応するドルを保有することが義務付けられ、流通する通貨は中央銀行の保有する米ドルにバックアップされることで信頼が得られます。

カレンシーボード制では通貨の発行量が中央銀行の保有する米ドルの総量に左右されるため、インフレの事前防止が期待できます。その半面、裏付けとなる外貨発行国の金融政策(米ドルの場合はアメリカの金融政策)に自国の金融政策が左右されるデメリットがあります。

おわりに

固定相場制を採用している国は限られていますが、現在でも固定相場制を維持している国は、新興国を中心にいくつか存在しています。

これらの国が変動相場制に移行するときには大きな影響が予想されるため、固定相場制を維持するかどうかは、注意したいポイントと言えるでしょう。

このコラムに関連する記事

チェックリスト: 0 件
開く
全クリア
TOP