現代の為替制度につながる「固定相場制」とはどのようなものか

固定相場制_アイキャッチ

主要国が変動為替相場制を導入している現在、固定相場制を導入している国は珍しく、過去の相場制度として扱われています。

しかし固定相場制は現在の外国為替市場の基礎となった為替制度であり、その成り立ちや仕組みを知ることは重要です。今回は固定相場制の歴史と、主要な仕組みを見てみましょう。

安定した為替レートを目指した「固定相場制」の概略

固定相場制は各国政府の間の取り決めに基づいて、為替レートを固定・維持する為替制度の仕組みであり、国家間をまたいだ貿易が活発になった第2次世界大戦終結後に本格的に導入されました。

固定相場制の基本となる取り決めとして、連合国44カ国が集まって1944年に成立した「ブレトン・ウッズ体制」があげられます。

ブレトン・ウッズ体制は自由貿易の発展による世界経済の安定化を目指した取り決めであり、1オンス=35米ドルの金本位制の導入により、米ドルと各国通貨の為替レートを一定に保ち、米ドルを基軸とした固定相場制を目指した仕組みでした。

米ドルを基軸通貨とする現在の外国為替市場のはじまりとなったブレトン・ウッズ体制は、国際通貨基金(International Monetary Fund = IMF)、国際復興開発銀行(International Bank for Reconstruction and Development = IBRD)の設立など、現在の国際金融の基本を形作るのに大きな役割を果たしました。

しかし世界各国の経済規模が極端に大きくなったことで固定相場制を裏付ける金の産出量や保有量を対応させることが難しくなり、1973年にドルと金の交換を停止した「ニクソン・ショック」により、主要国は変動為替相場制に移行していきました。

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固定相場制のメリット・デメリット

現在導入しているのは、ごく一部の新興国に限られている固定相場制ですが、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

固定相場制のメリット…輸出競争に有利

固定相場制のメリットとしてもっとも大きいのは、為替レートの管理が容易であり、途上国の産業を安定成長させるのが容易になる点です。

安定した為替レートの維持が期待できる固定相場制では、どの国に対しても製品を同じ価格で販売できるため、輸出産業を育成している新興国や輸出が経済の基盤となる国では、為替レートの管理が容易な固定相場制が変動相場制に比べると有利です。

固定相場制のデメリット…国際金融のトリレンマ

輸出のときの価格競争に有利になる固定相場制ですが、「国際金融のトリレンマ」に捕われるというデメリットが生じます。

国際金融のトリレンマとは、アメリカの経済学者ロバート・マンデルが提唱した金融仮説であり、「自由な資本移動」と「為替相場の安定(固定相場制)」、「独立した金融政策」の3つのうち、同時に2つまでしか実現できないとする仮説です。

主要国ではよりメリットの大きい自由な資本移動と独立した金融政策を実現するため、変動為替相場制を採用していますが、新興国や輸出が経済基盤の国では為替相場の安定を狙って固定相場制を維持しています。

知っておきたい。3つの固定相場制の仕組みと特徴

一口に固定相場制と言っても、その管理方法により「ドルペッグ制」と「通貨バスケット制」、「カレンシーボード制」の3つに分けられます。それぞれの内容を見てみましょう。

自国通貨の為替レートを米ドルと連動させる「ドルペッグ制」

ドルペッグ制とは、自国の貨幣レートを他国通貨と連動させるペッグ制(固定相場制)のうち、米ドルへのペッグ制を採用している固定相場制のことです。

経済基盤の弱い国や政情が不安定な新興国などでは、通貨価値が不安定であり大きく変動しがちです。不安定な通貨は正常な経済運営や海外投資の誘導を阻害するだけでなく、取引相手にも無用のリスクを負わせるため、ますます投資が呼びにくくなる悪循環を招きやすくなります。

こうした通貨リスクを軽くするために、自国の通貨レートを米ドルと連動させて為替レートと通貨価値の安定を図るのがドルペッグ制です。為替レートと通貨価値が安定するのがドルペッグ制のメリットですが、独自の金融政策を導入することが難しく、国内物価の調整が難しいというデメリットを含んでいます。

ドルペッグ制を採用している国と通貨は、香港・香港ドル(一定範囲内での変動)、エルサルバドル・コロン、パラナ・バルボア(硬貨のみ)、クウェートを除く中東の産油国などが知られています。

複数の外貨と連動する「通貨バスケット制」

通貨バスケット制は固定相場制のうち、自国通貨を複数の外貨と連動した為替レートに設定する仕組みであり、採用国が極めて限られることで知られています。

通貨バスケット制は「重み付け」により外国為替市場の影響を小さくできるものの、為替レートを求める計算の「複雑さ」やどのように為替レートを決定しているかの「不透明さ」などのデメリットがあります。

現時点で通貨バスケット制を採用している主な国には、シンガポール、ロシア、マレーシア、中国(2010年6月21日より米ドルは解除)などがあります。

中央銀行が為替レートを保証する「カレンシーボード制」

カレンシーボード制は、自国通貨と特定の外貨(主に米ドル)を一定の為替レートで交換することを保証し、国内に流通する自国通貨に相当する米ドルを中央銀行が保有する固定相場制です。

中央銀行は国内で流通する自国通貨に対応するドルを保有することが義務付けられ、流通する通貨は中央銀行の保有する米ドルにバックアップされることで信頼が得られます。カレンシーボード制の下では通貨の発行量が中央銀行の保有する米ドルの総量に左右されるため、インフレの事前防止が期待できます。しかし裏付けとなる外貨発行国の金融政策(米ドルの場合はアメリカの金融政策)に自国の金融政策が左右されるデメリットがあります。

おわりに

固定相場制を採用している国は急速に減少していますが、現在でも固定相場制を維持している国は、中国やロシアなどの一部の主要国も含めていくつかあります。

これらの国が変動相場制に移行するときには大きな影響が予想されるため、固定相場制を維持するかどうかは、注意したいポイントと言えるでしょう。

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