2010年3月1日に内閣府から昨年10月~12月期の「需給ギャップ(日本経済全体の需要と供給の差)」が、需要不足を示すマイナス6.1%(その後、マイナス6.4%に改定)だったとの推計が発表された。金額ベースでは、日本経済が年約30兆円の需要不足の状態にあるという。この長引くデフレ経済の打開策として、最近、「禁じ手」ともされる「マネタイゼーション」に注目が集まっているようだ。
マネタイゼーションとは、そもそも「現金化」を意味する言葉だが、一般的に中央銀行における国債の引受けを指して使われるケースが多く、平たく言ってしまえば「紙幣を増刷して、国家の資金不足を埋める」ということになる。現在、日本では、財政法第5条によって特別の事由がある場合を除き禁止されている「禁じ手」である。これは日銀のWebサイト上に紹介されているとおり、「中央銀行がいったん国債の引受けによって政府への資金供与を始めると、その国の財政節度を失わせ、ひいては中央銀行通貨の増発に歯止めが掛らなくなり、悪性のインフレーションを引き起こすおそれがある」からであるが、日本経済は過去にマネタイゼーションで世界的な恐慌から立ち直った経験がある。
1929年10月のニューヨーク株暴落で幕を開けた世界恐慌の最中、大蔵大臣として日本をデフレの底から浮上させた高橋是清のいわゆる「高橋財政」がそれである。世界経済の減速下で2年連続の2桁デフレにあえぐ日本経済に対して、円の切り下げや日銀の国債引受けによる政府支出の拡大などを実施し、日本経済を見事にデフレから脱却させた。この「高橋財政」には「軍部による際限のない戦費要求の糸口となった」など軍需インフレーション政策の道を開いたとの批判もあるが、「日本のケインズ」と評されるほど世界的に有名な財政政策である。
※その後、高橋是清はインフレを抑えようと軍事予算の縮小を試みたが軍部の恨みを買い2・26事件で暗殺される。
さて、この「禁じ手」が実際に実施されるか否かは知る由もないが、一部の政治家の中では「禁じ手」ともされる「マネタイゼーション」への興味が高まっているようだ。
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