イワイFX ウイークリーアウトルック2009年10月26日
相場はポジションを取らなければ(損もしないが)儲からない。豪ドル/円相場は10月2日の76円35銭を底に10月23日には85円32銭まで上昇した。この間、約9円の上昇である。
「Aさんは、豪ドル/円を75円85銭で買い指し値して相場をずっと観ていたが、豪ドル/円はスルスルと84円まで上がってしまって儲かりませんでした」「Bさんは買い指し値をずっと上げて相場についていったが、追いつかずにポジションがとれませんでした」というのはよくあるケースである。相場が上がったときには常に買いポジションを、相場が下がったときには常に売りポジションを持っているのが投資家の理想だが、なぜポジションがとれないのだろうか?それは買われすぎや売られすぎという「値頃感」が邪魔をするからである。
AさんもBさんも「豪ドル/円は上がる」という見通しを持っていたのである。実際、指し値もしていた。でも買えなかったのである。相場の実践は「相場観が当たっても儲からない」という非情な世界で、上げ相場で買えなかった、あるいは下げ相場で売れなかったというくやしい思いを、われわれ毎日のように味わっているのであるが、この問題を解決しないかぎり今後も後悔が続いていくことになる。相場の参入(エントリー)の仕方と利食い・損切り(イグジット)が、ルールに基づいてある程度システマティックに行われないと収益を上げることはむずかしい。
古今東西、こうした問題を解決する(相場に乗り損ねないようにする)ために、いろいろなアイデアが練られてきた。最もシンプルなものは「トレード・チャンネル」のブレイクアウトで、いわゆるレンジ抜け・抵抗線の突破である。また、この連載でたびたび取り上げているボリンジャーバンド1σのブレイクアウト(1σの外への飛び出し)もその1つである。ブレイクアウト手法は「高値を買ってさらに高値で売る」、「安値を売ってさらに安値で買い戻す」というある意味“ナイーブ”な手法なので、知性のある人や頭の良い方には非常に抵抗を感じる手法である。しかし、相場はアホになって素直に取り組まないと、上記のケースのように「買えない・買えていない」という現実しか残らない。
豪ドル/円(日足)と21日ボリンジャーバンド1σと20日ATR

買われすぎ・売られすぎという心理的抵抗感を排除するには、ポジションを小さくする、取引時間枠を短くするのが一般的な方法だが、究極は「損切りオーダー」をあらかじめ置いておくことである。ブレイクアウトの取引はダマシにあうことも日常茶飯事である。これを何度か経験すると、痛い目にあいたくないという気持ちから「値頃感」が浮上してくる。「値頃感」というのは値段になれていないというだけの話で、本来ナンセンスなものだ。そもそも為替相場には理論値などないのである。古典的な購買力平価説に始まるいくつかの理論があるが、相場がその理論値通り動くことは稀である。
それでは損切りをどこにおくかという問題が発生する。これは投資家の懐具合やリスク許容度の問題と関わってくるが、証拠金がなくなってしまえば相場を続けることはできない。そのため、相場を続けていくための計画が必要となる。たとえば、100万円の資金で20万円まで損をしてもよいと思っている人は、取引1回あたりの損失を2万円として、相場観に関係なく1回の取引で2万円損したらやめてしまうのである。そうすると、10回連続損をしたところで20万円の損となる。逆に言えば、この人は10回連続損をするまでは相場を続ける事が出来る。資産管理の問題は単純に言えばこういうことになる。あとは、相場の動的な変動幅(1日にいくら動くか・1ヶ月にいくら動くか等・・)にあわせてレバレッジを調整し、資産管理を行っていくしかない。
「椎名由起夫のFXの方程式」のこれまでの連載ではATRを円キャリートレードのツールとして解説してきたが、本来ATRはシステムトレーダー(機械的に取引する人)がストップロス(損切り)やプロフィットカット(利益確定)の目安として使っているツールである。
資産管理上の最適な損切り幅は、投資集団“タートルズ”のルールが有名だが、日足ベースのスウィング・トレーダーは持ち値から2ATR(ATRの2倍)離したところに損切り注文を置くのがよいと言われている。そして、「2ATRの損失額が1回の取引で証拠金の2%以下になるようにポジション金額を決める」がタートルズの資産管理ルールである。
10月26日(レポート執筆時)の豪ドル/円の20日ATRは1円16銭である。教科書的な一般論では、日足ベースのスウィング・トレーダーは持ち値から2ATR(ATRの2倍)離したところに損切り注文を置くのがよいと言われている。つまり、持ち値から2円32銭離したところに損切り注文を置くことになる。ややテクニカル的で難解な話になるので、資産管理方法や損切りルールに興味のある方は、『ザ・タートル 投資家たちの士官学校』マイケル・コベル(著)などのタートルズ関係の本を読んで頂きたい。
筆者は20日ATRを好んで使っているが、一般にATRは14日を使う人が多く、トレードで使用している移動平均のパラメータを使う人も多い。10月23日の20日ATRは1円16銭であるが、日計り専門の短期取引者(デイ・トレーダー)は最大でもその半分の58銭以下のリスク(1/2ATR)しかとらないのが普通である。
どこに損切りを置くかという問題は、取引通貨や取引手法、あるいは取引時間枠によって最適値はまちまちなので、ここでは基本的な話だけに留めておく。下のチャートは豪ドル/円の1時間足と20時間ATRの推移である。10月23日 AM10:00現在の豪ドル/円(1時間足)の20時間ATRは25銭(0.25円)である。保守的なデイトレーダーは持ち値から2ATRの50銭下にストップをおくのが一般的である。また、移動平均線で取引するトレーダーは(X時間移動平均値-1/2ATR(ATRの半分))をストップロスに置いている人も多い。
豪ドル/円(1時間足)と21時間ボリンジャーバンド1σと20時間ATR

ATRの値は動的に変化していくので、ストップ注文もそれに合わせてスライドさせる必要があるが、きりがないので1日1回でいいだろう。いずれにせよ、ATRは相場変動の輪郭と相場変動リスクを教えてくれる有効なツールであることは間違いがない。リーマンショック時と現在の相場では、同じポジションでも取っているリスクは全然違うが、それを簡単に教えてくれるのがATRである。
相場の「分析や予測」と「実践」には大きな壁がある。「値頃感からは買いたくない、しかし売るのもこわい」というのが現在の外為・株式・商品市場の共通した投資家心理であるが、これでは動きようがない。何もしないのも相場だが、それでは収益が得られない。このような問題を解決するには、相場のブレイクアウト局面では損切りを置いて、とりあえず相場に乗ってみるしかないのである。そして、相場についていくという順張り手法の多くに有効なのは「1時間足」というタイムフレームであることを付け加えておきたい。
今週のドル/円、ユーロ/ドル、ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円相場は、以下のチャートの「黄色の部分をコア・レンジ」とした上下の緑色の部分までの変動を予想している。黄色のコア・レンジをブレイクすると、緑色のレンジに相場の方向が移りやすい。
先週、ドル/円相場は21日ボリンジャーバンドの2σまで上昇した。したがって、週初は過熱感から上値が重くなる可能性がある。今週はドルリバウンド相場の3週目に入るが、先週の相場の強さから考えると、11月中旬(5週間)までリバウンド相場を継続する可能性がある。相場が93円半ばを超えてくると、ドル/円の上昇は修正高の範疇を逸脱し、思わぬ上昇をみる可能性があるので注意したい。いずれにせよ、今週も押し目買いが有効か・・。





●円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年10月23日まで)
ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。









