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椎名由紀夫の「FXの方程式」

椎名由紀夫

現役ファンドマネジャー、椎名由紀夫氏がタイムリーに提供する「プロの目から見た」相場見通し、ぜひ皆様の投資戦略のご参考としてお役立てください。

G7からG20へのパワーシフトと米国の通貨政策

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イワイFXウイークリーアウトルック2009年10月5日

 グローバル・マクロ・ファンド(マクロ経済予測に基づいて相場の方向性に掛けるポジションをとるファンド)の間で最近話題となっているのが、G7からG20への移行による外為市場の構造変化である。

 先進国はGDPの分母も大きく、どこも低成長である。低成長の先進国に投資しても儲からないので、新興国の成長から収益を得ようというのが、ここ数年のグローバルな資本家の戦略といわれているが、それを受けて国際経済の意思決定の場はG7からG20に移行した。2009年9月25日のG20(20ヶ国・地域首脳会議)声明で、今後はG20を世界経済に関する第一の協議の場とすることが正式に表明された。このパワーシフトによって外為市場にも大きな構造変化がもたらされるだろう。

 9月25日のG20で確認されたことは、グローバル・インバランス(世界不均衡)の是正、すなわち国際貿易収支の再均衡である。これは世界経済の構造改革であり、今後の為替相場の大きなトレンドを決する決定であるので、これからのG20の動きには最大限の注意を払う必要があろう。通貨の歴史は政治の歴史でもあるからだ。

G7からG20へのパワーシフトと米国の通貨政策
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 G20の動きと合わせたように、9月27日に世銀のゼーリック総裁が「世界の経済力はシフトしており、成長は複合的な要因によってもたらされるという事実を認識する必要がある」「米国が世界の独占的な基軸通貨としてドルの地位を当然視すれば、それは間違いだ。今後は他の選択肢も増えてくるだろう」(ブルームバーグ)と述べたことで波紋を呼んでいる。ゼーリック総裁は、昨年から「今日の世界にふさわしい新たな多国間協調主義は、柔軟なネットワークが求められている」と述べており、G7の崩壊と世界の多極化を予想していた。また10月1日にはIMFエコノミストがアジア通貨上昇の必要性を示唆(ロイター)との報道もあったが、これらはすべて軸を一にしている。

マサチューセッツアベニューモデル(ポリシー・ミックスの基本)
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 G20の決定が示唆するのは、米ドルの穏やかな減価政策である。通貨の歴史をみてみると、米国は好景気の時はドル高政策を、不景気の時はドル安政策をとっており、現在はドル安政策を採用していると思われる。ドルの印刷機をフル回転させたバーナンキFRB議長がとっている政策は「積極財政・低金利・通貨安」のポリシー・ミックスであり、目的はデフレ回避である。大恐慌研究の専門家であるバーナンキFRB議長の恐慌回避策の結論は「ジャブジャブの流動性・金融システムの整備・通貨安」の3点セットのようだ。また、オバマ政権のサマーズ国家経済会議(NEC)委員長は「ドル安を誘導し、米国の輸出力を回復することで、米国経済の中心を消費から生産に戻したい」と述べている。「強いドルは米国の国益」という言葉は、急激なドル安を避けるための口先介入にすぎないだろう。

 G7がG20に移行した背景には米国の構造改革とグローバル資本家の思惑が複雑にからみあっていると言われている。現在の米国は穏やかなドル安をとっているという思惑から、いくつかのグローバル・マクロ・ファンドはドル売りポジションを構築している。ドル/円は80円台に入り、値頃感からのドル買いも出ているようだが、投機筋は介入ポイントといわれる85円を試しにくる可能性がある。ドル/円(週足)の14週RSIをみると、まだ円高の余地があり、値頃感からの買い(逆張り)は危険と言えよう。

ドル/円(週足)と14週RSI(赤)の推移 まだ円高の余地がある
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 相場は極限の心理ゲームであり、修羅場つづきだ。一番手堅い手法は、「FXの方程式」でずっと紹介している1時間足による「1σブレイクアウトシステム」であろう。あらかじめ計算された臆病さをもって相場にアプローチするこの売買手法は、何よりストレスが小さい。

ユーロ/円(1時間足) 21時間ボリンジャーバンド1σとADXの推移
 

 G7声明は為替相場の無秩序な変動を警告したものの、ドル安批判はなかった。ドル安には直接言及せず、「過度な為替変動は経済・金融の安定に悪影響を与える」と従来の文言を繰り返すにとどめた。季節要因的なアノマリーから言えば、円安反転があるとしても10月15日以降ではないか?また、ドル相場を観る上で、今週から来週にかけてのユーロ/ドルの動きに注目したい。いずれにせよ、ボリンジャーバンドの1σ抜けとADXが有利なリスク/リターンの機会を示唆してくれるだろう。

 今週のドル/円、ユーロ/ドル、ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円相場は、以下のチャートの「黄色の部分をコア・レンジ」とした上下の緑色の部分までの変動を予想している。黄色のコア・レンジをブレイクすると、緑色のレンジに相場の方向が移りやすい。

ドル/円 今週の予想レンジ
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ユーロ/ドル 今週の予想レンジ
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ユーロ/円 今週の予想レンジ
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ポンド/円 今週の予想レンジ
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豪ドル/円 今週の予想レンジ
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●円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年10月2日まで)
 ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。

豪ドル/円(左)とユーロ/円(右)の20日ATR
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ポンド/円(左)とドル/円(右)の20日ATR
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