イワイFX ウイークリーアウトルック2009年9月28日
9月24日のFOMCは「MBS(住宅ローン担保証券)とエージンシー債(住宅関連機関債)の購入ペースを鈍化させ、当初は年末に終了する予定だった購入プログラムを3ヶ月延長する方針(購入総額は1兆4,500億ドルに据え置き)」を決定した。FRBは8月のFOMCで「長期国債買い入れを1ヶ月延長・10月末までに終了」することを決定して以来、金融正常化(出口戦略)に向けてゆっくりと動き出していると言えよう。現在のバブル相場はFRBのポートフォリオの膨張で成り立っているので、FOMCの決定はバブル減速要因だが、低金利政策は当分続くため市場は楽観しているようだ。
現在の金融バブルに沸いている株式相場が金融正常化を経て「業績相場」に移行すれば問題がないが、これはかなりハードルが高いのではないかと筆者はみている。むしろ、過剰流動性を吸収することによって、金融相場が「逆金融相場」になるのではないかという懸念がある。
FRBのバランスシート(2008年1月~2009年9月)
9月14日の英テレブラフ紙に「米銀は貸し渋りを拡大しており、信用供給の総量が減少し、これを受けてドルの流通量も急減している。減少のスピードは大恐慌の1930年代初頭を思わせる激しさである」という「米景気のW底懸念」の記事があったが、どうもバブル相場の裏側で見えない金融収縮が始まっているような気がする。
時価会計が凍結されているうちは、デリバティブの損失も表面化しないし、損切りも出てこないが、現在の株高が砂上の楼閣的な危うさを内包していることは頭に入れておきたい。デリバティブ商品の損失の多くは簿外(オフ・バランス)であり、決算発表の数字だけでは金融機関の全容が見えない。バーナンキFRB議長は「景気底打ち宣言」をしているが、話半分に聞き流しておくのがよいだろう。米CNNの世論調査で86%の米国民が「米国経済は景気後退に入っている」と答えているように、米国の実体経済は実質17%を超える大量失業や、米銀を直撃する商業用不動産の問題等、この先も難題だらけだ。
一方、米銀は大口客となっているFRBを窓口に低利で資金調達が可能なため、行き場のない資金を金融市場に投入している。その結果、金融商品の世界だけはどんどんバブルが進んでいく。現状、このような二極化と楽観・悲観のせめぎあいの中で、筆者が何に注目しているかというと、それは米銀の株価である。米銀行株の指数が上がっているうちは金融バブル相場が継続するが、逆金融相場になったときには、この指数が最も敏感に反応するだろう。
フィラデルフィアKBW銀行株指数(日足)
通貨供給量を増やしすぎた結果としての株高の裏側で、外為市場ではドル安という副作用が露呈してきている。また、倍率という比較感からは、FRB以上にポートフォリオを膨らませているのがBOE(英中銀)である。8月あたりから英国の財政不安や英商業用不動産ローン問題が浮上し、ポンドは資金逃避と投機筋の売りで軟調な展開が続いている。通貨をプリンティングしすぎている米・英の通貨が売られているというのが、現在のドル安・ポンド安の構造で、ドルキャリーやポンドキャリーのトレードで通貨安になっているのではない。
中央銀行のポートフォリオの拡大比率=ドル安・ポンド安の構造
英銀はロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループとロイズ・バンキング・グループの2行が、英不動産市況の低迷から合計3兆円近い評価損を計上しており、英商業用不動産ローンの大半がデフォルト状態で借り換え困難と言われている。先週のレポートで「現在、ユーロ/ポンドに日足ベースでトレンドが発生(ユーロ買い・ポンド売り)しており、投機筋の注目を集めている」と述べたが、9月24日にキング英中銀総裁が「ポンド安が輸出促進による英経済リバランスの助けになる」と保護主義的発言をしたことで、ポンド売りに拍車がかかり、ユーロ/ポンドが急騰、ポンド/ドルは急落した。
ユーロ/ポンド(左)とポンド/ドル(右)の日足
上段:14日ADX(赤)と26日標準偏差ボラティリティ
今年のポンド相場は対ドルで比較的底堅い動きとなっていたが、現在の外為相場は紙幣の印刷需給相場である。ようやくポンド相場にも大量印刷のツケがまわってきたようだ。BOEの総裁がポンド安を望み、藤井財務大臣が円安政策はとらないと言っているのだから、投機筋はポンド/円の売りを仕掛けてくるだろう。ポンド/円相場の売りトレンドが大きな相場となるか注目したい。
ポンド/円(日足)21日ボリンジャーバンド1σの飛び出しと14日ADX
ポンド/円(1時間足)21時間ボリンジャーバンド1σの飛び出しと14時間ADX
下のチャートは、今年の3月17日を100とした円相場の推移だが、もっとも出口に近いと言われ、今年の最強通貨となっている豪ドル/円は、円高局面でも下方硬直性があるので、円買い局面は他の通貨ペアを選択したほうがよいだろう。
2009年3月17日を100とした円相場の推移
ドル/円相場は、先週金曜日に近くて遠いと言われた90円を、4回目のトライでブレイクした。紙幣印刷需給相場が8月から継続しており、今後も循環的にドル安・ポンド安相場がつづくだろう。ポンド売り相場は現在、トレンドの自己強化プロセスに入っている。ドル/円相場は週初に90円を回復しない限り、87円をトライしにいくことになりそうだ。いずれにせよ、「相場に逆らわずについていく」というスタンスを維持したい。
今週のドル/円、ユーロ/ドル、ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円相場は、以下のチャートの「黄色の部分をコア・レンジ」とした上下の緑色の部分までの変動を予想している。黄色のコア・レンジをブレイクすると、緑色のレンジに相場の方向が移りやすい。
ドル/円 今週の予想レンジ
ユーロ/ドル 今週の予想レンジ
ユーロ/円 今週の予想レンジ
ポンド/円 今週の予想レンジ
豪ドル/円 今週の予想レンジ
●円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年9月25日まで)
ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。
豪ドル/円(左)とユーロ/円(右)の20日ATR
ポンド/円(左)とドル/円(右)の20日ATR



































