イワイFXウイークリーアウトルック 2009年8月31日号
IMFによるとG20諸国で計12兆ドル(93円50銭換算で約1,122兆円)の緊急対策が実施されている。MV = PYの恒等式から景気がその分持ち直すのは当然だ。ただし、株価はすでにそれを織り込んでいる可能性がある。現在、世界中の株価が割高な水準まで買われており、 バリュエーション(PER・PBR・配当)的には買いづらくなっている。一方、金融市場はジャブジャブの状況に変わりはなく、時価会計も棚上げされているので損切りがでてこない。したがって、大きな下げトレンドも出にくい。
このような上にも下にも動きにくい状況のなかで、投機筋は収益機会を作るため上海株を材料にしている。リーマンショック後、株価大暴落に見舞われた中国は4兆元の景気対策と併せて、金融機関に対しての融資拡大を要請した。中国の新規銀行融資は昨年1年間の増加額が約4兆9,100億元だったのに対して、今年上半期だけで約7兆3,667億元にもなっている。市場の噂ではこのうちの2割程度は株式市場に流入しているという。中国株がバブルするのは当然である。
中国の新規銀行融資(上段)と中国 上海総合指数(下段)2000年1月~2009年7月
ところが、7月の新規銀行融資額は6月の約1兆5,300億元から約3,559億元に急減したため、足の速い投機筋が出口政策を警戒し株式市場から資金流出が起こった(ちなみに、第一財経日報(オンライン版)は8月28日、「中国の8月の新規融資は3,000億元(約4兆1,100億円)を下回る公算が大きいと報じている)。これで、バブル崩壊かと弱気筋の声が大きくなったが、中国株の下落はガス抜きの域を出ていないと筆者は思っている。なぜなら、上海株が下落基調になってからも、米国株は上昇しているからだ。資金が中国から米国株や日本株にまわっているだけである。市場の目は徐々に出口政策や出口政策後に向いているが、超金融緩和のジャブジャブ状況はしばらく続くため市場に方向感は出にくい。
中国 上海総合指数(上段)と米S&P500株価指数(下段)の日足
筆者の波動観測では、9月第2週までは円高基調が続きそうだが、今年の相場は日足ベースではなかなかトレンドが発生しないので<1時間足>での取引がよい。取引の軸足を1時間足での取引に移すことを推奨して3週間目に入るが、1時間足はどのような相場でも収益機会があるので、この売買手法を継続するのが有効だろう。
豪ドル/円(1時間足)21時間ボリンジャーバンドと14時間ADXの推移
ADXが上昇し相場がボリンジャーバンドの1σの外にある時が強いトレンド期間
(筆者はADXの上昇局面で移動平均線に傾きがあるのを確認して、ボリンジャーバンドの1σの外側でのみ取引している。ストップ・ロス注文はボリンジャーバンドの1σの近辺に置いている。この売買手法はクロス円相場に適しているが、変動率の上がらないドル/円相場では機能しにくい)
イワイFX 豪ドル/円(1時間足)
21時間ボリンジャーバンド1σと14時間ADXの推移

相場というのは確率にかけるゲームである。不確実性の高い今後の相場に対処するには、21時間ボリンジャーバンドの1σ抜けとADXのシグナルを併用した売買が一番手堅い(ケガの少ない売買手法)と思われる。
今週のドル/円、ユーロ/ドル、ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円相場は、以下のチャートの「黄色の部分をコア・レンジ」とした上下の緑色の部分までの変動を予想している。黄色のコア・レンジをブレイクすると、緑色のレンジに相場の方向が移りやすい。
ドル/円 今週の予想レンジ
ユーロ/ドル 今週の予想レンジ
ユーロ/円 今週の予想レンジ
ポンド/円 今週の予想レンジ
豪ドル/円 今週の予想レンジ
円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年8月28日まで)
ドル/円およびクロス円市場は「円の上昇時に変動幅が拡大し、円の下落時に変動幅が縮小する」という市場の構造を持っている。(特に変動幅縮小の過程では円安になりやすいというのが円相場の特徴である)ドル/円やクロス円通貨は、ATR(アベレージトゥルーレンジ)が下がる過程で円安、上がる過程で円高となるパターンが多い。黄色の期間は円の売り放置やキャリー取引はリスクが高くなる。
豪ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
ユーロ/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
ポンド/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯
ドル/円(日足)とATR 緑のATR低下期間が円売りの有効時間帯























現在の株高や金融バブルを延命させるには、米国のリフレ(バブル)政策の持続が必要条件となってくるが、その意味で今週のFOMCは相場の大きなトレンドを決する重要なイベントといえよう。元FRB理事でマクロエコノミック・アドバイザーズ副会長のローレンス・マイヤー氏は8月4日に「FRBが進めている最大3000億ドルの米国債買い取り計画は、予定通り9月半ばで終了となる公算が高い」と予想している。金融バブル相場の一番おいしいところはスタートから半年間である。仮に、米国債買い取りが9月で終了となれば、現在の過剰流動性に大きな変化が生じ、秋には相場の潮目が変わる可能性が大きい。FOMCの決定に注目したい。


● 円相場の相場変動幅(ATR)の動向(データは2009年8月7日まで)















